四国徳島県には西日本で2番目に高い日本百名山「剣山」がありますが、その東に標高1496mの雲早山(くもさやま、くもそうやま)があります。

剣山系の山々が連なっている雲早山周辺は四国の中でも指折りの豪雨地帯で、山の頂上には雨乞いの神様である雲早神社が祀られています。
登山道周辺にはブナの原生林やミズナラ、ヒノキなどが自生しており、自然溢れる風景が魅力の山で、季節によってフクジュソウやタカネオトギリ、トリカブトやカタクリなど珍しい草花が私たちを出迎えてくれます。
頂上は360度の展望が広がり、天気が良いと太平洋や紀伊水道を望む事ができます。
四国の屋根とも呼ばれている剣山系の山「雲早山」への登山案内です。
1.登山口へのアクセスと難易度
登山口までマイカー使用
徳島自動車道「脇町IC」→国道193号→剣山スーパー林道→雲早山登山口
脇町ICから登山口まで約44km、1時間20分
登山コース
登山口→高丸山分岐点→雲早山頂上

コースタイム(往復) | 体力レベル | 技術レベル |
2時間30分 | ★☆☆☆☆ | ★☆☆☆☆ |
雲早山の登山口は、国道193号線の雲早トンネルから剣山スーパー林道に入り、約2km進んだ所にあります。
剣山スーパー林道は延長87.7km、幅員4.6mの日本一長い林道です。

標高600~1000mの山々を突き抜けている林道周辺では、紅葉やバードウォッチング、渓流釣りや山野草など大自然を楽しむことができます。
ただこのスーパー林道、大部分は未舗装で大きい岩が道路上に散乱している箇所も多いのです。
幅自体は広いので車がすれ違う余裕は十分ありますが、雲早トンネルから雲早山登山口までもかなり凹凸がありました。


車高の低い車はバンパーに石が当たる可能性が高く、雨が降った直後は林道がぬかるみ状態になって前へ進めなくなる可能性もあります。
林道周辺には所々広くなっているスペースがありますので、途中で車を停めて登山口まで歩くことも可能です。
スーパー林道の入り口、雲早トンネルから歩いた場合、30分程度で登山口までたどり着きます。

雲早山登山口にも車が数台停められるスペースがあります。
そして登山口から頂上までは約70分程度ですが、途中からかなりの急こう配になり、一部登山道が分かにくい個所が続きます。
雨が降りやすい雲早山では、降雨後登山道周辺が川のようになってしまうので土がえぐれている所も多く見られます。
登山途中には案内看板もほとんどないので地図やコンパス、登山靴など一般的な装備は必要です。
2.登山口から高丸山尾根へ向かう
ではさっそく雲早山へ出かけましょう。

登山口に案内看板がありますが、季節によって見られる草花を確認できます。
- 4月:シャクナゲ、アケボノツツジ
- 6月:ヤマボウシ
- 8月~9月:トリカブトの花
登山口のすぐ近くには雲早神社の鳥居があるので、ここから頂上にある雲早神社の祠を目指すことになります。

序盤は勾配もほとんど無く歩きやすい道が続きますが、登山道が分かりにくい部分もあるので慎重に進みましょう。
この雲早山には緑の苔が一面に広がっている箇所があります。

登山沿いに遠くまで広がる苔の群落風景は結構珍しいのではないでしょうか。
新緑の木々と地面に広がる苔の中を歩いていると、それだけで大自然からパワーを浴びている感覚になります。
標高は1000mを超えていますので夏でも大変涼しく、渓流から流れてくる風がとても気持ち良いですよ。
なお途中で川を渡渉して進ますので、足を滑らせないよう十分注意しましょう。

特に雨が降った後は水量も増すので要注意です。
徒渉した先には苔に覆われた丸太椅子がありますが、直接座るのは無理っぽいですね。

この渓流沿いにトリカブトの一大群生地があります。

紫や白や黄色などの花を咲かせるトリカブトは日本三大有毒植物の一つとされていますが、写真の登山道周囲にある緑の草がトリカブトです。

遠くから緑の葉を見るとヨモギに似ているような気もしますし、春の山菜取りの時期になると「ニリンソウ」の新芽と間違えた誤食事故が度々発生しています。
秋には綺麗な花を見る事ができますが、触ったり取ったりしないで鑑賞するだけにしておきましょうね。
ちなみにトリカブトの苗は一般向けに販売されていて、各家庭で育てても問題ありません。
そしてここから先は渓流から外れて急斜面を登っていきます。

登山道がかなり分かりにくくなっていて、案内看板なども一切ありませんので、木々の赤テープを目印に慎重に進んでいきましょう。
新緑の木々からの木漏れ日が何とも言えない幻想的な雰囲気です。

前へ進みながら登山道を歩いていて気付いたことは、樹木の一部が剥がれているのを度々見かけます。

四国、特に徳島県の山では鹿が多く繁殖していて、樹皮剥ぎ被害が深刻になっています。
山の稜線の笹原も鹿が食い尽くしてしまい、周辺が褐色に変わってしまうほどです。
植物が育たなくなると土壌が荒れてしまいますので、土壌が侵食され、斜面が崩壊してしまいます。
例えば百名山の剣山では鹿除けのネットなどを設置したりしていますが、全ての山にネットを張ることなど不可能ですし、その間にも鹿はどんどん繁殖します。
昨今の集中豪雨による日本全国の土砂災害が増加していることも考慮して、国や自治体や民間など官民一体となった効果の高い持続性のある対策が求められています。
急斜面と苔の道を進んでいくとだいぶ視界が広がってきます。
そして雲早山と高丸山との分岐点にたどり着きます。

3.雲早神社がある頂上へ
ここから雲早山頂上までは15分です。
勾配もほとんどなく、周囲に無数の山々が遠くまで見渡せる稜線歩きが楽しいですよ。

そして分岐点から数分歩くと一気に空が広がります。

ただこの周辺にも葉っぱが散ってしまった枯れかけの樹木が多数あるのです。
これも鹿による被害なのでしょうか。
そして小高い丘を登りきった先が雲早山山頂です。

頂上は少し広くなっていて、真ん中に雲早神社の祠があります。

360度の展望が広がっていて、周りには山しかありませんので、本当に山深い所まで来たのだと実感できます。
写真では分かりにくいのですが、この日は多少雲があるものの概ね晴れていて、遠くにははっきりと海を望むことができました。

湿度が低い秋以降でしたら、もっとくっきり遠くが見通せると思いますよ。
4.まとめ
四国徳島県の剣山系の山「雲早山」は、四国でも有数の豪雨地帯にあって周囲には無数の山々が連なっています。
アクセスは決して楽とはいえないのですが、周辺には山からの豊富な水が滴る美しい滝がいくつもあります。
秋には山全体が黄金色に染まって、繁殖期を迎えた鹿の鳴き声が響き渡ります。

冬季には閉鎖される剣山スーパー林道ですが、樹氷や氷瀑を求めて訪れるハイカーも多いのです。
大自然からの恵みが嬉しい「雲早山」登山案内でした。