平地でも気温10°を切る日々になり、山並みが白く染まり始めてきました。
夏山シーズンも終わり、いよいよ冬山シーズンが始まりますね。雪山にはたくさんの魅力が詰まっています。しかし雪山は夏山に比べ環境・技術共に難易度が高いのは事実です。本記事では、雪山がどう危険なのかを知って頂ければと思います。
*本記事は雪山に気軽に行くための記事ではなく、正しく理解して挑んでいただくための記事です。
雪山は危険?
雪山とは、文字通り雪のある山のこと。
分類が難しく夏の雪渓も雪山になるかもしれませんが、ここでは春の残雪期を含む11月〜4月ごろの山とさせていただきます。
私もそうですが、よく周囲の人から「雪山も登るの?」と聞かれることがあります。
多くの人が雪山には危険なイメージを抱いている印象があります。しかし、漠然と危ないから登らないというのはもったいないと考えています。
何がどう、危険なのかを正しく理解した上で雪山に向き合っていただければと思います。まずは雪山に潜む危険と回避法についてお伝えしていきたいと思います。
雪崩
雪山の危険と言えば、1番に思いつくキーワードは雪崩でしょう。
時速200kmにもなることもあり近くで発生すれば音も殆ど発生しないため回避は困難とされています。しかし雪崩には起きやすい条件がいくつかあります。
雪崩の発生条件
- 気象条件
- 大量降雪後・急激な気温上昇
- 急傾斜
- 傾斜35度以上
- 露地・低木林地域
- 木の生えていないor低木林のみの傾斜部。
雪崩の回避法
このほかにも雪崩の発生条件はありますが、これらを回避すればほとんど雪崩に出会うことはありません。
また、雪崩のハザードマップなどの情報を仕入れると過去の雪崩発生箇所などを知ることができるので、登山前に調べておくと安心です。雪崩は自然現象であり出会うと回避も難しく危険ですので、発生条件を知り回避しましょう。
道迷い
雪山に行くとなった時に心配することの一つとして、道が雪に覆われ道に迷うことです。
また、雪山は夏道とルート自体が変わることもしばしばあります。
道迷いが起きる要因
- 積雪・降雪によるルート不明瞭
積雪が樹林帯にも及び、テープや道標が埋もれ、降雪で視界を奪われ道迷いが発生することがあります。
樹林帯ですと方角がわからなくなるリングワンデリング、露地や稜線ではホワイトアウトに注意が必要です。 - 足跡
雪山では夏山と違い先行者の足跡があります。足跡を辿っていくと目的地に着くことが多く、ある意味道迷いが起きにくそうですが、先行者が間違えた道や、違う目的のルートに行っているとそこに巻き込まれる可能性もあります。 - 電子機器の限界
雪山は気温が低く、電子機器は電池の消費が激しくなります。普段スマホのGPSに頼っていると電池が切れた際に、ルートがわからなくなったり、救助が呼べない可能性が出てきます。
道迷いの回避法
道迷いを防ぐには、確実なルートファインディングを行うことが必須になります。
こまめに地図を見て自分の位置を把握することが重要です。地図読みに自信がないのであれば、登山用GPSを買ったり、詳しい人と共に行きましょう。
低体温・凍傷
夏でも涼しい山岳地帯。雪山に行くと、極寒であるのはたやすく想像できます。
また、冬の風は夏とは比べ物にならないほど強く、体感気温は想像を絶するものになります。
低体温・凍傷になる要因
- 低温・強風
冬山は基本的に氷点下で、強風であることが多いです。低温と強風は体温をみるみる奪います。そして、どこもかしこも寒く逃げ場がありません。 - 不適切なレイヤリング(重ね着の調整)
冬山の装備には保温機能がついているものがほとんどです。冬山装備でないとより体温が奪われやすくなります。しかし、春先や天気がいい日風の無い日は、暑く冬山装備だと汗をかきます。汗は体を冷やすため、汗をかかないレイヤリングが必要になります。
低体温・凍傷の回避法
低体温を回避するには寒いところに行かないしか方法はありません。
しかし、雪崩と違い正しい装備さえあれば対応も可能です。体温管理が重要となるため、レイヤリングと保温を意識しましょう。
転倒・滑落
転倒・滑落は夏山でも起きますが、冬山では発生因子が異なります。
転倒・滑落の原因
- 登山道条件の悪さ
雪山では行程の多くを雪か氷の上を歩くことになります。厄介なのが、氷の上に雪が積もった状況です。雪によって氷を認識できず、転倒・滑落する可能性があります。岩場では雪・氷・岩のMixとなりそれなりの技術が必要になります。また、稜線上では暴風や、雪庇(せり出した雪の塊)の踏み抜きにも注意が必要です。 - 体力不足
雪山は雪の上を歩いたり、アイゼンを装着したりと体力が奪われる機会が多いです。体力が奪われると、バランスや判断力が低下し転倒・滑落につながります。
転倒・滑落の回避法
回避するにはチェーンスパイクや・アイゼン・ピッケルを適切に使用すること。注意したいのが、道具の使用が不慣れなことで起きる転倒転落です。特にアイゼンやピッケルは使い方を間違えると自分や人を傷つけますので注意が必要です。正しい使い方と滑落停止法も学びましょう。
一番はできるだけ急傾斜のある山に行かないことが重要です。特に初心者の方はアイゼン・ピッケルを使用する山は回避しましょう。
冬山と医学
看護師として医学の視点から、冬山の危険を考えてみたいと思います。
低温に対する生体反応
体は暖かくなると血管が拡張し、寒くなると血管が収縮します。
手や足の血管が収縮すると、温かい血液が行き届かず凍傷が発生します。
また、血管の収縮や拡張は心臓に負担がかかりますので、持病をお持ちの方は十分な注意が必要です。
低体温になると代謝も落ち、熱を発生させる要因が減りさらに体温は低下します。
寒い時に発熱するために体が震えることをシバリングと言いますが、全身性のシバリングは体力と酸素を著しく消費させるので、シバリングを起こさないために適切な保温と加温が必要になります。
救助の困難さ
夏山でも同じですが、冬山は気象条件が安定せず、ヘリでの搬送が困難であったり、日照時間の短さから救出活動の時間制限が大きくなります。
そのため、救助が必要になってから時間がかかる可能性があります。雪山は滞在するだけでも条件が厳しいので、無積雪期と同様に事故・遭難を起こさない事を前提に計画し行動するようにしましょう。
初心者が挑む安全な雪山条件
以下の条件を意識して雪山に挑んでみましょう!
- 気象条件:風が穏やかな晴れ
- 山選び:樹林帯メイン
- なだらかな
- 標高低め
- 全行程3〜4時間以内
- 人気の山
- 山小屋があるルート
- 装備:様々な気温に対応できるウェア
- 滑り止め(チェーンスパイク・ストック)
- 温かい食事
- 電池の予備
- 地図
- 頼れる仲間(ガイドツアーなど)
- 事前準備:危険箇所の洗い出し
- 天気予報
まとめ
雪山には魅力がたくさんありますが、その反面危険もあります。
雪山登山を楽しんでいただくため、まず危険を知った上で雪山に挑んで欲しいと思います。
しかし、ここに書いた危険は一部であり、回避する術を持っていたとしても100%回避できる保証はありません。まずは何が危険なのかを認識できるスキルをつけることが安全登山の第一歩です。そして安全対策は1つだけでなく、幾重にも行うことでトラブルに対応できます。雪山に限らず、登山は自己責任になるので、自分の身は自分で守りましょう。