標高1,000m前後の山を有する関東の定番スポット、丹沢。塔ノ岳、鍋割山など、関東在住のハイカーに人気の山々が連なる中で、深田久弥が選定した日本百名山の一峰が丹沢にあります。丹沢の主脈上に位置する丹沢山は、広々としつつも静かな山頂が特徴で、丹沢の深い自然の一端を感じられる名山です。今回は丹沢の玄関口のひとつ、大倉から登る日帰りルートをご紹介します。
丹沢山とは

標高1,567m、丹沢山塊の中心に位置する山です。山頂は木々の中で静かに佇んでおり、眺望が広くハイカーに人気のある表丹沢の山々と比較して見劣りのする印象がありますが、山頂に至る稜線、付近にある沢など、丹沢山は山域のありのままの姿を現在に残す貴重な場所で、奥深い山の自然を感じられます。
山容はなだらかで包容力がある印象を持ち、人と密接な関係を築き上げてきた丹沢を象徴する親しみのある姿をしています。山頂にはみやま山荘があり、神奈川県最高峰の蛭ヶ岳へ続く主脈上に丹沢山が位置していることから、大きな存在感を持ちながら、丹沢での山旅において一息つく休憩スポットとしても丹沢山が機能しています。
登山ルートは複数あり、塔ノ岳方面、塩水橋方面、蛭ヶ岳方面、本間ノ頭方面の四方向に登山道が伸びています。
いずれも日帰り可能な範囲ですが距離があるので、登山を何度か経験されてから登るのが最適です。
今回のおすすめルート
今回は丹沢の中でも随一の登山者数を誇る人気エリア、表丹沢の玄関口のひとつである大倉から登るルートをご紹介します。
大倉からは塔ノ岳まで伸びる標高差約1,200mの大倉尾根を登り、塔ノ岳から丹沢山までは主脈と呼ばれる稜線を歩きます。
塔ノ岳までで体力・気力の大半を消費しますが、そんな疲れもどこへやら、塔ノ岳からの絶景がすっ飛ばしてくれます。塔ノ岳まででもお腹いっぱいになりそうですが、ここで一踏ん張りして主脈を歩けば、丹沢が持つ原生林の美しさと稜線からの山深い丹沢の姿というご褒美が待っています。
日帰りとしては長丁場のルートで健脚向きとなりますが、明瞭で歩きやすく塔ノ岳までは登山者も多い安全な登山道でありながら、1日で丹沢の中心部までアクセスできるのは、このルートならではの大きなメリットです。
駐車場とトイレ

登山口である大倉には有料駐車場が幾つかあり、8時開場の戸川公園駐車場、24時間利用可能の民営駐車場が主に利用されています。
トイレは大倉バス停そばにあるので、登山直前に済ませておくことができます。
みやま山荘

丹沢山の山頂にある山小屋です。
小屋では宿泊のほか軽食を摂ることができ、水分、食料補給の貴重な場所として存在しています。
情報も定期的に更新され、丹沢山域を登る方にとっての情報源としても重宝され、丹沢の安全基地として365日営業されています。
館内は木の温もりの温かみと清潔感のある館内で、小ぢんまりとした館内に豊富な本棚を備え、山小屋らしい雰囲気に癒やされます。
宿泊は予約制となり、事前の連絡が必要となります。
行程

コースタイム | 体力レベル | 技術レベル |
9時間55分 | ★★★★ | ★★✩✩ |
塔ノ岳まで登る大倉尾根は明瞭な登山道で迷うことなく安心して登れます。
反面、これでもかという急勾配が続き、初めて登る方は「まだ続くの?」と心折れそうになるかもしれません。
大倉尾根も花立山荘を過ぎれば塔ノ岳を間近に目視でき、30分ほどで山頂に到着です。
塔ノ岳を過ぎれば若干の上り下りはあるものの、主脈は大倉尾根ほどの体力は必要ないので、ここまでの苦労を帳消しにできる稜線歩きを楽しめます。
丹沢山山頂は眺望は塔ノ岳ほどではありませんが、静かで休憩にピッタリ、山ならではの静寂の時間を過ごせるおすすめの山頂です。
下山は往路を戻りますが、焦らず気持ちに余裕を持って下山します。
長丁場の登山となるので、早めに登山をスタートするのがおすすめです。
序盤:大倉から塔ノ岳へ

大倉をスタートし、登山道へ向かいます。

分岐を左へ

本格的に登山道に入ります

勾配は徐々に急になり、天まで続くのかと思うほどの登りが牙をむき出しにして待っています

大倉尾根の中間地点である堀山の家。ここで一休みするのが良いです

堀山の家を過ぎ、花立山荘直下で現れる長い階段。ここが踏ん張りどころです

眺望が開けます

花立山荘に到着。ここまで来れば塔ノ岳まで30分ほど

花立山荘を過ぎ、塔ノ岳へ

ここまで来ればあと少し

塔ノ岳に到着です

絶景です


塔ノ岳で休んだら、丹沢山へ

アップダウンはありますが、歩きやすい稜線が丹沢山まで伸びています

丹沢が持つ稜線美を心ゆくまで

丹沢山への最後の休憩スポット、竜ヶ馬場より大山を望む。湘南エリアで有名な江ノ島も見えています

丹沢山まであと少し

遂に到着です

山頂には整地された広場にベンチが数台設置されています。水分補給や食事を摂り、怪我のないよう下山します
下山後のおすすめ:湯遊三昧 湯花楽 秦野店
丹沢へのアクセスで利用される小田急線沿線では、鶴巻温泉駅や東海大学前駅などで下山後に立ち寄れる温泉があります。今回ご紹介するのは、塩水橋から246号線まで戻り、そこから15分ほどの場所にある、湯花楽です。
個性ある風呂が内湯、露天に設置されていますが、中でも登山後に必ず入りたいのは、高濃度人工炭酸泉で、冷え切った身体が芯まで温まります。
館内は落ち着いた雰囲気で、ついそのまま眠りたくなるほど。サウナや食事処もあるので、登山後の疲れを癒やして帰路につけます。
丹沢山に登って山深い丹沢の魅力に触れよう

丹沢山は日本百名山の一峰にして、丹沢の中心に位置する山域を代表する山です。おおらかな山容と静かな山頂が魅力で、眺望やアクセスが良好といった、人気の山にある様なポイントは丹沢山にはありませんが、山本来が持つ自然の奥深さと街とは異なるゆっくりとした時間の流れなど、丹沢山だからこそ感じられる素敵な魅力にあふれています。丹沢山に登って、ぜひ山の持つ魅力に触れてみてください。