梅雨が長引き、なかなか山に行けない日々が続いています。
梅雨が開ければ本格的な登山シーズンが始まり、山小屋には忙しい時期が来ます。今回は山小屋での生活や人間関係などをお伝えしていきたいと思います。どんな人が向いているのか、お風呂は?食事は?恋愛へ発展することも?山小屋での生活についてお伝えしていきます。
山小屋での生活
山小屋の生活は常に共同生活です。
仕事以外は「バイト部屋」と言うプレバブ小屋で生活していました。一人のスペースとしては約1.5畳分で、隣とはバスタオルで仕切りを作っていましたので、プライベートな空間や時間はほとんどありません。
食生活
食事は山小屋生活の中でもかなり重要なポイントです。
1番の楽しみと言っても過言ではないです。
小屋一の料理人が定期的に送られてくる食材を使ってまかないを作ってくれます。とても美味しかったです。お米だけは食べ放題だったので、お米を大量に食べてお腹が空かないようにしていました。
お菓子は、小屋から少し支給もしてくれますが、親族や友人に頼みヘリで送ってもらいます。
私たちは「救援物資」と呼んでいました。入山当初は、ヘリが飛ばず救援物資が尽きることもあり、お菓子に飢えていました(笑)。仕事中下山したら、何を食べたいかよくバイト仲間たちと話していました。
また、当然酒類やタバコなどの嗜好品も山では買えないので、休日や歩荷(ぼっか)の際に補充していました。歩荷をした日や、飲み会の日には生ビールをいただく事もありました。標高が高いので酒が回りやすく、残りやすいので飲み過ぎには注意が必要です。
お風呂・トイレ
私の働いた山小屋の場合は、水が豊富だったのでシャワーが設置されており、毎日シャワーを浴びることができました。小屋によっては毎日温泉に入れる小屋もあったり、逆に数日に一回だけしか入れない小屋もあるようです。
トイレも水洗でウォシュレットもありました。小屋によってはいわゆる「ぼっとん便所」であったりと、小屋での差が大きいです。
電波
携帯の電波は、かなり通じるようになっていますが、地形によっては弱く、LINEはできても通話はできないと言う状況は多々あります。
私の小屋は電波弱めでしたので、快晴の日に窓際に行かないと電波が通じませんでした。入山当初はスマホで某パズルゲームをしていましたが、初日で諦めました…。そのため、通話したい時や写真を送受信する時は、稜線までいくこともありました。
娯楽
山小屋では日によっては暇なときもあります。特に雨の日は暇です。その時間をどのようにして過ごしているかというと。
TV
地上波放送は映りましたので、TVを見て過ごす時間が一番長かったと思います。特にNHKの朝ドラは、みんなでよく見ていました。
散歩・登山
みんな山好きですので、天気の良い休憩時間は、景色の良いところまで遊びに行くことが多かったです。近くのピークやバリエーションルートを探索したり、手ごろな岩を見つけて、ボルダリングをしたりしていました。
昼寝
朝が早いので、休憩時間に寝ることも多々ありました。ほとんどバイト小屋で寝ていましたが、天気がいい時は、稜線まで行って寝たり、各々好きなようにしていました。いい景色の中で昼寝するのは最高です!
そのほか、読書やトランプ・DVD鑑賞など意外と娯楽は多いですし、バイト仲間と雑談していると退屈することはありませんでした。
山小屋バイトのメリット
山小屋で働くからこそ得られるメリットがたくさんあります。
景色が素晴らしい
季節の移り変わりに伴う景観の変化や、貴重な動植物との出会い、貴重な自然現象と言ったように、ずっといるからこそみられる景色は山小屋の特権です。毎朝美しい朝日を浴びながら仕事をし、綺麗な星空を眺めながらの生活にはお金では買えない価値があります。
登山技術が向上する
山で生活するので常に不整地の岩の上や、雪渓を登ったりと言ったように生活の中で登山をしています。そのため、ただ生活しているだけでも体力・筋力・心肺機能が向上します。
浮き石を見ただけでどう動くか一瞬で判断できるようになったり、歩き方も早く・安定した歩きができるようになったりとスキル面での成長も感じました。また、仕事もありたくさんの山に登ることはできないですが、山を楽しむスキルが成長します。
人脈ができる
山で生活しているといろいろな人と関わる機会があります。同僚や他の山小屋スタッフ・登山ガイドはもちろん、立山・劔岳には富山県警の山岳警備隊の駐屯地があり、警備隊の方と関わる機会が多くありました。こうした出会いは、自分の知見を広げてくれます。
小屋での人間関係
山小屋での生活は、仕事とプライベートはほぼ区切りがなく、数ヶ月同じメンバーと一緒に過ごします。
数千メートルの山の中には逃げ場もありません。どんなに高く難しい山に登れても、一番大事なのは協調性です。ずっと一緒なのでストレスが溜まることもありますが、幸運にも良い仲間に恵まれ、大きなトラブルもなく楽しく過ごすことができました。
また中期・短期バイトが来ると雰囲気が変わります。
趣味も合うし、ずっと一緒にいるので中には、恋愛に発展するスタッフもいました。共同生活なので気遣いしてしまうので水面下で進展していることが多いですが、一緒に生活しているので必ずバレます(笑)。
しかし逆に、生活や仕事が合わず、やめてしまうスタッフもいます。山小屋という特殊な環境ですので、山が好きだけでは難しい仕事かもしれませんね。いろいろな出来事が起きますが、終わってみると良い思い出と仲間を手に入れることができました。
山小屋バイトに興味がある方へ
ここまで話したように、山小屋でのバイトは楽しいこともある反面、大変なこともたくさんあります。山が好きで応募することはもちろん良いですが、仕事がメインの生活となるので、意外と登山の機会は少なくなるかもしれません。しかし、山が好きだからこそ伝わるものもあると思いますので、好きな気持ちは持って、休日や休憩時間に登山を楽しみましょう。
ここで書いた山小屋バイトの経験は私の小屋でのことであり、山小屋によって内容は大きく差が出ると思います。小屋選びの際に、自分の行きたい山域はもちろん、小屋の環境等についてよく調べておきましょう。
収容人数・小屋からの景観など調べておくといいと思います。特に水が豊富かどうかは、生活の質がかなり変わるのでチェックして下さい。また女性の場合、男性の多い場所ですので、女性スタッフへの気遣いができているかの確認は重要だと思います。そして、山に仕事をしに行くんだという気持ちと、共同生活であるということをご理解いただき応募すると、楽しく山小屋生活を過ごせるでしょう。
最後に
私は山小屋バイトを今でもやって良かったと思います。
山でしか得られない経験の数々はきっと、後の人生において大きな影響を与えることになると思います。山小屋でのバイトを考えていない方も、山小屋スタッフがこのように生活し、サービスを提供し、登山道はこのように維持されているんだということを感じていただけたのなら幸いです。
歩荷中の「すごい」や「頑張れ」はとても励みになります。不器用で人見知りの多い山小屋スタッフが多いですが、気軽に声をかけていただければ元気が出ます。