登山用レインウェアって何を基準に選べばいい?

雨の季節になり登山用のレインウェアを探されている方も多いのではないでしょうか?
各アウトドアブランドからたくさんのジャケットが出ていて、何を基準に選んだらいいのか、自分にはどれが合っているのか分からなくなりますよね。
レインウェアの構造に重点を置いて選ぶときのポイントを解説していきます。
レインウェアの構造
レインウェアは上の図のように非常に薄いメンブレンという膜(GORE-TEXなどの本体)があり、表地+メンブレン、または表地+メンブレン+裏地という2層〜3層の構造になっています。
そもそもなぜレインウェアにメンブレンが必要なの?
「ウインドブレーカーで撥水性のあるジャケットではダメなの?」と思われる方もいらっしゃると思います。
撥水加工が施された表地だけでは長時間雨に当たっていると、水分量に対して撥水性能が上回り充分な防水効果がありません。
そこで撥水加工した表地の裏に透湿防水性のあるメンブレンを貼り付けることで、水滴がウェアの内部に侵入してくれるのを防いでくれます。
またレインウェアを着て行動していると汗をかいて蒸れる事によって内部からも濡れてしまうのです。
そのようなことにならないためにも透湿性のあるメンブレンがウェア内部の汗や水蒸気を外部に放出し、ウェアの中が汗で濡れるのを防いでくれているのです。
メンブレンとは?
メンブレンがレインウェアの性能を左右します。
メンブレンには様々な種類がありますが、ここでは代表的なものを2つ紹介します。
多孔メンブレン(GORE-TEX)
メンブレン(フィルム)に無数の小さな穴があいたものを多孔フィルムと言います。
雨や霧などの水滴は通しませんが、水蒸気は通る大きさの穴が開いているんです。
フィルムに穴が開いているので、服の内部の湿気を外に逃がしてくれる効果が高いのが特徴です。
透湿防水素材で有名なGORE-TEXのメンブレンはこの多孔メンブレンに分類されます。
デメリットとしては多孔フィルムを使用したレインウェアは、次に説明する無孔フィルムのものよりも値段が高くなることが挙げられます。
また多孔フィルムはポリウレタン樹脂で作られているため無孔フィルムよりも加水分解を起こしやすいです。
加水分解とは
レインウェアに特化して説明すると、メンブレンが空気中に含まれる水蒸気などの水分を含んでボロボロと剝がれてくること。
ですがGORE-TEXで使用されているePTFEフィルムはフッ素で作られているため物性が非常に安定しており、加水分解を起こしにくいとされています。
無孔メンブレン
一方写真のように穴が開いていないフィルムを無孔フィルムと言います。
「穴が開いていないのにどうやって水蒸気を外に出すの?」と思いますよね。
実はフィルムの中に「親水基」という水とくっつきやすい性質をもつ原子の固まりがあります。
汗をかいたときにウェア内部の水蒸気濃度が高くなると、この親水基が水分を取り込んで水蒸気濃度の低いウェア外部へと蒸れを放出してくれるのです。
ですがやはり穴の開いている多孔フィルムに比べると水蒸気を外に逃がしにくくなります。
無孔フィルムの特徴としては薄塗でも透湿防水性の機能を発揮してくれるので生地が硬くなりにくく、ストレッチ性を持たせることができます。
また無孔フィルムはエーテル系の樹脂でできているので、ポリウレタン樹脂系の多孔フィルムに比べて加水分解を起こしにくくなっています。
レインウェア生地の種類
お店に行ってレインウェアの裏面を見てみると、ジャケットの裏面にメンブレンが見えているものもあれば、灰色の生地が貼ってあるものもありますよね。
実はレインウェアに使用されている生地は大きく分けて次のように3種類あります。
- 2層(2レイヤー):表地+透湿防水フィルム
- 2.5層(2.5レイヤー):表地+透湿防水フィルム+凸凹状のプリント
- 3層(3レイヤー):表地+透湿防水フィルム+裏地
それぞれの生地の特徴とメリット・デメリットを解説していきます。
2層

2層の生地は表地の裏に透湿防水メンブレンが貼り付けられているという構造になっています。
写真のように裏面がツルンとした見た目が特徴です。
ゴアテックスで言うとGORE-TEX PACLITEがこれにあたります。
2層生地のメリット
- 生地を1枚しか使っていないので軽い
- 風合いが柔らかく、ソフトな着心地
- 値段が安め
2層生地のデメリット
- 汗をかいたときに、べたつく感じがする
- メンブレンがむき出しの状態なので、傷がつきやすく、機能が損なわれる
2層生地のジャケット
マーモット コモドジャケット
マーモットのコモドジャケットにはゴアテックスPACLITEが使われています。
軽量でコンパクト性が高いのが特徴です。
軽量でスタイリッシュな見た目なので、山でも街でも使えるレインウェアがほしい人にオススメです。
モンベル バーサライトジャケット
モンベルのバーサライトジャケットにはゴアテックスInfinium Windstopperという生地が使われています。
ゴアテックスのInfiniumシリーズは防水性に特化しておらず、透湿性と耐風性に特化したテクノロジーです。
モンベルでは防水性の部分をカバーするためにシームテープ処理を施すことでレインウェアとしての機能を持たせています。
トレイルランニングやスピードハイクなど軽い装備で運動量の多い方にオススメです。
2層生地レインウェアはこんな人にオススメ
- レインウェアは初めて買うのでお手頃な値段のものがほしい人
- 柔らかな着心地のレインウェアがほしい人
- とにかく軽いレインウェアがほしい人
2.5層

2.5層は表地に貼り付けられたメンブレンの上に凸凹状の加工がされていたり、ドット柄やダイヤ柄などのプリントが施されたりしているのが特徴です。
ゴアテックスPACLITE PLUSがこの2.5層にあたります。
2.5層生地のメリット
- 軽量でソフトな着心地
- 裏面がザラッとしているので、汗をかいても生地が肌に貼りつきにくい
2.5層生地のデメリット
- メンブレンがむき出しの状態なので傷がつきやすい
2.5層生地のジャケット
アークテリクス ゼータSL
アークテリクスのゼータSLにはゴアテックスPACLITE PLUSが使われています。
軽量でベタつきにくいという機能はもちろんですが、何といってもシンプルなデザインときれいなシルエットがアークテリクスの特徴です。
オフの日だけでなく通勤にも使えるレインウェアをお探しの方にオススメです。
マムート クライメイトレインスーツAF
マムートのクライメイトレインスーツAFにもゴアテックスPACLITE PLUSが使われています。
ジャケットのジッパーはダブルファスナーになっているので、ジャケット内部が蒸れてきたときは下から開けると空気の通り道ができて効率よくウェア内部の蒸れを放出してくれます。
暑がりでレインウェアの蒸れはできるだけ軽減したいという方にオススメです。
2.5層生地レインウェアはこんな人にオススメ
- 多少値段は上がっても軽量なレインウェアがほしい人
- 柔らかな着心地のレインウェアがほしい人
- 汗かきな人
3層

3層は表地+メンブレンの裏に薄い裏地を貼ったものです。
写真のようなグレーの生地が貼られているジャケットを見たことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ゴアテックスPROやゴアテックスACTIVEがこの3層にあたります。
3層生地のメリット
- メンブレンが生地でカバーされているので、ジャケットの裏面が傷つきにくい
- 汗をかいたときに肌への張り付きを感じにくい
3層生地のデメリット
- 2層/2.5層に比べてジャケットが重たくなる
- ゴワゴワした硬めの着心地
3層生地のジャケット
THE NORTH FACE クライムライトジャケット
THE NORTH FACEのクライムライトジャケットはゴアテックスマイクログリッドバッカーというテクノロジーを採用しています。
ゴアテックスの3層品は裏地にニットを使用しているものがほとんどですが、マイクログリッドバッカーは織物を使用しています。
これによりミドルレイヤーの上からレインウェアを羽織るときの摩擦に強くなり、また軽量性も実現されました。
耐久性は譲れないが、できるだけ軽量なレインウェアをお探しの方にオススメです。
モンベル ストームクルーザージャケット
モンベルのストームクルーザージャケットにはゴアテックスCニットバッカーという生地が使われています。
裏地にニットを使用しているため柔らかい肌触りが特徴です。
ゴアテックスの高い性能がありながら、着心地も良くてお手頃価格のレインウェアです。
3層生地レインウェアはこんな人にオススメ
- 耐久性重視の人
- 生地のベタツキが気になる人
それぞれの生地の比較表
2層 | 2.5層 | 3層 | |
耐久性 | 〇 | 〇 | ◎ |
生地の柔らかさ | ◎ | ◎ | 〇 |
肌への貼りつき | △ | 〇 | ◎ |
軽量性 | ◎ | ◎ | △ |
向いているシーン | ・トレイルランニング ・ファストハイク | ・ファストハイク ・運動量の多いアクティビティ | ・雪山 ・藪漕ぎや岩場のあるルート |
レインウェアは生地にも注目!

レインウェアの要である透湿防水性のポイント、メンブレンと生地の構造について解説しました。
生地の特徴を抑えてお店に行ってみると、これまでとは違う視点でレインウェアを選ぶことができると思います。
来る夏山シーズンに向けてレインウェアの新調を考えている方、是非生地の裏面にも注目してジャケットを選んでみてください。