【開花情報・シロヤシオ】北アルプスへのステップアップ!西丹沢、檜洞丸「つつじ新道」を行く

関東甲信

首都圏郊外に位置する丹沢山塊は、推定で年間約30万人が訪れる深田百名山にも選出された人気の山域ですが、大山(おおやま)や塔ノ岳、丹沢山などが位置する東側の「東丹沢」と、今回ご紹介する西側の「西丹沢」とに大きく区分されています。

ここでは、間もなくシーズン最盛期を迎えるシロヤシオの情報を交えながら、コースの一例を紹介いたします。

「アルプスに挑戦するため高尾山や筑波山、奥多摩や表丹沢は登ってみたけれども、次はどこにチャレンジしてみようか?」「つつじが有名と聞いたけれども、詳細を知りたい。」といった方にオススメの記事です!

目次

(1)「西丹沢」エリアの概要

「西丹沢」の盟主といわれることの多い檜洞丸(ひのきぼらまる/1,601m)や大室山(おおむろやま/1,587m)をはじめとする西丹沢の登山道は、大山や塔ノ岳といった東丹沢の主要な登山道に比べて全般に自然の地形を生かした登山道が多いため、渡渉・道の不明瞭箇所・ハシゴやクサリを含めた三点支持を要する危険箇所等がみられます。

登山地図(スマホと紙、GPS等)、コンパス、照明、飲料・食料、雨具等の準備や他地域での登山経験があると安心です。一方で、東丹沢よりも登山者は全体的に少なく、変化に富んだ静かな山歩きが可能です。

この山域が大衆向けの近代登山の対象として登山道整備がされたのは比較的新しく、1955年の国体山岳競技の開催に伴い丹沢主稜(最高峰の蛭ヶ岳以西)の登山道が整備されたのをはじめ、以後1960年代前半にかけて代表的な「つつじ新道(登山拠点となる西丹沢ビジターセンター(旧:西丹沢自然教室)と檜洞丸山頂を結ぶ最短路)」などの登山道も切り開かれたそうです。

また、気になるヤマビルですが、神奈川県の調査によると丹沢東部地域(大山などのエリア)に比べると密度は相当低い(場所によっては例なし)ため、遭遇する可能性は非常に低いと思われます。(不安な場合は、塩やアルコールスプレー、忌避剤があると安心です。)

登山拠点の西丹沢ビジターセンター。事故防止啓発のタルチョがかかる。

今回はシロヤシオで有名な檜洞丸を含む「石棚山稜」周回コースを取材しました。

丹沢のシロヤシオは5月中旬~6月上旬が見ごろで、東丹沢を含む多くは標高1000メートル以上の範囲で見られます。枝先に5枚の葉がつくため「ゴヨウツツジ」の別名も。

10月中旬から11月の秋にかけては、鮮やかな紅葉となり登山者の目を惹きます。

取材日は標高1000~1350mほどのシロヤシオが開花、檜洞丸直下の標高1450m以上ではつぼみの個体が多い状態でした。

開花量により「当たり年」「外れ年」と年により変化はありますが、特に檜洞丸直下の「つつじ新道」は最盛期には「ツツジのトンネル」となります。

春だけでなく、秋もツツジの紅葉で楽しめる

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(2)モデルコースの紹介(最新取材)

箒沢(ほうきさわ)公園橋~石棚山~石棚山稜~檜洞丸~つつじ新道~西丹沢ビジターセンター

  • 距離:約11㎞/コースタイム:約8時間/累積標高:↑約1350m・↓約1300m(登山の経験が推奨)
  • 登山施設:青ヶ岳山荘(公式サイト:トップ (t-com.ne.jp)) トイレ:あり/水場:なし/売店:あり
  • コース上のトイレ
     【山頂】青ヶ岳山荘の1カ所(1回100円)
     【登山口】箒沢公園橋、なし
      ※バスの場合、1つ前のバス停「箒沢」前に水洗トイレあり、水道(飲用可)有。
      「箒沢」バス停~登山口の「箒沢公園橋」バス停間は徒歩約10分。
出典:ヤマプラ(地図に情報を加筆)

樹齢2千年の箒杉(ほうきすぎ)が見守る箒沢集落付近を起点、西丹沢の登山拠点である西丹沢ビジターセンターを終点とする周回コースになります。

今回のコースを右回り(つつじ新道で登り、石棚山稜で降り)にすると、コース上の核心部が疲労もたまるコース後半になることから、初見で不安のある場合は左回り(石棚山稜で登り、つつじ新道で降り)をお勧めします。

また、朝1番と2番のバスを利用する登山者でつつじ新道は局所的に混雑する傾向にありますので、これも同時に回避(山頂ランチタイムも混雑時間帯を回避)できます。

箒沢集落は樹齢2千年の箒杉が見守る

このコースは新緑・花や展望を見ながらの稜線漫歩を楽しめる反面、沢沿い、渡渉、尾根の急登、ザレ・クサリといった慎重を要する箇所も点在するボリュームのあるコースになります。

経験、体力、判断等に不安がある場合は、西丹沢ビジターセンターからの「つつじ新道往復」をお勧めします。  

【アクセス】登山口(箒沢公園橋)まで

箒沢公園橋。バス停以外の施設はない。

◆マイカー(東名高速、大井松田ICより国道246号・県道76号線で28㎞)
入りやすいコンビニエンスストアは高速を降りてから1店舗(山北市街の国道沿い)となります。


西丹沢ビジターセンター周辺の駐車場から徒歩約15分。ハイシーズンは早朝より混雑することもあります。(取材日当日(土曜)は午前8時半で満車。)


◆電車・バス(小田急線新松田駅、①のりば、富士急湘南バス「西丹沢ビジターセンター行」で約70分)
新松田駅周辺にはコンビニエンスストアや商店もあります。コースタイムを逆算すると、始発ないし次のバスに乗る必要があります。(登山口到着は8時半頃)バスの本数も1時間に約1本程度となりますので、要事前確認。

バス停「箒沢公園橋」下車。(トイレ利用で「箒沢」下車の場合、徒歩約10分) 

小田急新松田駅、JR松田駅前

(3)区間別のコース概況

箒沢公園橋→板小屋沢ノ頭(いたごやさわのあたま)、約2㎞・約140分

梅雨や台風通過後の増水時は注意

丹沢主稜を源流にもつ河内川を渡り登山スタートです。早速コースの核心部になります。

前半は渡渉や足場の悪い斜面の巻道を含む沢沿を約1㎞進んだあと、ザレ・クサリを含む樹林帯の急登尾根道となります。

一方で、緑のトンネルが続きますので、たまに一呼吸を入れながらのんびりと登っていきましょう。

足下はこぶし大の石(礫)が多くみられるので、落石を起こさないよう注意も必要です。

板小屋沢ノ頭まではザレ・クサリを含む急登が続く

板小屋沢ノ頭→石棚山(玄倉(くろくら)方面分岐)、約1㎞・約70分

途中小ピークが3つあります。

いずれも三点支持を要する比較的急な登下降(いずれも標高差50m程度)を含みます。

事故には十分注意が必要です。足下にはミヤマキンバイの群生が、頭上にはシロヤシオ、トウゴクミツバツツジといったツツジ類も見られるようになります。鞍部を駆け抜ける風が気持ちよい。

次の小ピークやツツジ以外の花も見られます

石棚山→檜洞丸、約3㎞・約90分

ここから山頂までは、一変して比較的なだらかな尾根道にかわります。

緑の天然絨毯や富士山をみながら、新緑のブナ林の中を鳥のさえずりとともにゆったりと歩きます。

登山者も比較的まばらなため、珍しい動物に出会えるかもしれません。

また、テシロノ頭付近からシロヤシオをはじめとしたツツジ類の個体数も徐々に多くなってきます。

90分ほどの稜線漫歩を終え、丸太階段が続くようになるといよいよ「つつじ新道」に合流、登山者の数も一気に多くなります。約30分ほどで山頂に到着です。

山頂にはベンチも設置されており、各方面の展望も広がっております。

樹林帯の中であることから、落ち着いた雰囲気の山頂となっています。山頂から数分、蛭ヶ岳方面に下ったところに青が映える「青ヶ岳山荘」に到着です。

深山にたたずむ檜洞丸「青ヶ岳山荘」
山頂付近のブナの立ち枯れ、今日現在でも複合的な要因から衰退が進んでいるそうです。

(下山)檜洞丸→つつじ新道→ゴーラ沢出合→下山、約5㎞・約180分

山頂直下から標高1350mくらいまでが、シロヤシオが最も多い区間になります。(ハイシーズンは「つつじのトンネル」)1962年に開通したよく整備された登山道ですが、ゴーラ沢出合までの区間は全体的に急坂(ハシゴや要三点支持の場所もあり)となります。

山頂から約100分、沢を流れる水の音が聞こえてくると間もなくゴーラ沢出合です。

渡渉を終えると、よく整備された沢の高巻き道を緩やかに下っていきます。

最後は沢沿い(若干悪い)に下り、車道に出ます。10分ほど車道を歩いて西丹沢ビジターセンターに到着します。

ゴーラ沢出合。冷たい!

(4)下山後

ぶなの湯(中川温泉)

武田信玄が負傷した兵隊を療養していたことから『信玄の隠し湯』とのいわれも。

新松田駅からバス利用の場合「ぶなの湯セット券」が発売されています。バス単独の乗車往復券に150円をプラス(2021年5月現在)すると入浴セット券になるため、お得感があります。

丹沢湖(三保ダム)

1979年完成の湖・多目的ダム。

足柄方面からの鮎沢川と谷峨駅付近で合流し、酒匂川として小田原方面へ流れていきます。

東丹沢の塔ノ岳や丹沢山の西方からの玄倉川、山中湖に近い山域からの世附川といった水も流れ着くため、様々な山の味?がブレンドされています。中央に「多作式鈴張橋」の永歳(えいさい)橋がかかる。

この夏「アルプス」や「八ヶ岳」といった登山者憧れの山域に挑戦したいと考えている皆様も、ぜひ西丹沢でステップアップをしてみてはいかがでしょうか?