【丹沢・檜洞丸】深山・西丹沢の盟主をめぐる海から山への自転車登山録~満開のシロヤシオを求めて~【前編】

山紹介

可憐な白い花を咲かせる「シロヤシオ」で有名な西丹沢の檜洞丸(ひのきぼらまる)への登山を海から取材しました。

関連文献によると、檜洞丸への登山道は1955年の第10回国体を期に整備が進み、1960年代初頭、ようやく山域に代表される「つつじ新道」も開通したとのことです。

西丹沢の盟主・檜洞丸の代名詞「シロヤシオ」

アプローチにも少し手間の要する檜洞丸周辺は、大山や塔ノ岳といった賑わいのある東丹沢周辺とは異なり、ブナの大木に覆われた「かつての深山」の面影を今でも感じ取ることができます。

ブナの新緑がまぶしい檜洞丸直下の登山道

現在はマイカーやバスもアクセス可能な檜洞丸ですが、それでも登山口からの標高差は1,000mを超えてきます。

渡渉箇所を含む急こう配の道を1日がかりで進む登山となるため、もちろん万全な装備と計画が必要となります。

今回は、この西丹沢の盟主「檜洞丸」がかつて持っていたとされる、「深山の雰囲気」を今でも味わうことができるのか、自転車と徒歩でシロヤシオ最盛期の檜洞丸を目指したいと思います。

旅程

東海道の宿駅としても栄えていた箱根山麓の街、小田原の国府津(こうづ)海岸を出発し、約40㎞先の西丹沢の登山口を目指します。
その後「つつじ新道」経由で檜洞丸山頂を踏んだのち、「石棚山稜」で下山をしていきます。

檜洞丸周辺の一滴を源流とする水の流れは、数多の支流を束ねながら酒匂(さかわ)川として南下、下流では小田原をはじめとする市街地が広がる平野をつくりました。

小田原提灯(小田原駅)

また、酒匂川は多くの人々が住まう京浜地区の水源ともなっており、人々の生活にも欠かせない重要な河川となっています。

登山口までの自転車”旅”

海から里へ~はじまりは浜から~

前日までに用意しておいた自転車をピックアップし、生命の源、海からスタートをします。

今回の出発地は、目的地から流れた水が戻ってくる海
(小田原市)

幾人かの人々が釣り糸を垂らしている早朝の浜は、ゆったりとしたさざ波の音に包まれており、水平線に視線を移すと”関東の奥座敷・箱根”の裾野も広がっています。

まずは西丹沢の山麓を目指して、季節もかなり進んできた田園の道を無心に進みます。
遠くには霞む丹沢の山々が小さく見えていますが、気が滅入りそうになるため意識をしないようにします。

東丹沢・鍋割山から流れてくる川音(かわおと)川

海から1時間ほど”漕いで”きましたが、最初は小さく見えていた山々の姿も徐々に大きくなってきました。

丹沢から流れ出た支流(川音川)の橋を渡りながら人口約1万人のコンパクトな松田の街へと入っていきます。

#おそらく最南端(丹沢)
北緯35度20分50秒、東経139度8分50秒

2路線が乗り入れる松田駅は西丹沢の主要な玄関口の一つとなっており、西丹沢や寄(やどりき)方面へのアクセス拠点にもなります。

シーズン朝は多くの登山者でにぎわう(新松田/松田駅)

駅前には飲食店やコンビニエンスストアもあるため、登山前の最終補給も可能です。
特に西丹沢の登山口付近の水道は飲用不可のため、バスに乗る前に用意をしないと後で右往左往するため注意が必要です。

地酒「丹沢山」を醸造する酒蔵(山北町)

松田の市街地を通り抜けると民家の並ぶ旧国道を進んでいきますが、5キロほどで次の山北の街へと入っていきます。

昭和の風情を感じさせる(山北駅)

屈指の登山者を擁する塔ノ岳(1,491m)と所縁があるのが、この山北町に創建された「東光院」となります。

塔ノ岳山頂には山頂碑を撮る定番のスポットがあり、多くの登山者のスマホ(塔ノ岳に登られた読者の皆様がいらっしゃれば、山頂碑の写真を見返してみてください。)右下に必ず映られるのが、山北町「東光院」由来の如来様です。

PIXTA

時代や形を変えても、我々登山者の気づかぬところで、必ず登山の安全を見守って下さっています。

山行記録でも東は高尾、西は葛城と並んで必ず上位に食い込む塔ノ岳ですが、それゆえ登山系SNS・WEBでの露出を日本で最も多くなさる仏様でいらっしゃるのではないでしょうか。

里から山へ~いよいよ山道へ~

酒匂川の中流~上流にかけては渓谷沿いの道を進む

山北駅を過ぎると建物もまばらとなり、いよいよ本格的な山道となってきます。
酒匂川の浸食した渓谷沿いに国道や鉄道がへばりつくように伸びており、眼下には白い河原が広がります。

きついアルバイト。マイカーやバスでは気にも留めない区間に汗が出る。

道の駅やキャンプ場を横目にいくつかの集落を過ぎると、間もなく京浜地区の水がめ・丹沢湖への急な上り坂に差し掛かります。
マイカーやバスに乗っていると気にもかけないようなこの場所も、人力となるとなかなか”痺れ”ます。

山間の丹沢湖を抜けて行く

当時を知る由はないですが、湖が完成してから今年ですでに40年以上が経過しています。

今では立派な斜張橋で超える人造湖も、昔は峠越えで渓谷底の集落(三保村)まで大きく標高を落とし、さらに山奥の集落を旅人は目指していたそうです。

秘湯・中川温泉

日も徐々に高くなり、額には汗がにじみ出てきますが、時折涼しい風が谷間を下っていきます。

道路の幅も徐々に狭くなる

周囲ではアカショウビンアオバトのさえずりも聞こえ、自動車による登山口までの道のりとは異なり、より自然と近い距離で進んでいくことができます。

ふと、普通車のすれ違いも困難なくらい道が狭いことに気付くのですが、よくバスを通していただいてますね・・・。

箒杉がランドマークとなる箒沢集落を抜けると、間もなくエメラルドブルーの大きな鉄橋が見えてきます。ここまで来ると、檜洞丸への登山口となる西丹沢ビジターセンター(標高約550m)も目と鼻の先です。

※後編に続く