【一ノ沢から常念岳】雪渓と絶景を堪能するルートを詳しく紹介

山紹介

北アルプス南部に位置する常念山脈。燕岳、蝶ヶ岳、横通岳などの山々が連ね、その中に日本百名山の一峰、常念岳があります。

整ったピラミッド型で堂々とした山容が目を引き、山頂からは槍ヶ岳、奥穂高岳を始めとした北アルプスの雄姿が望めるとして人気があり、登山シーズンは北アルプス入門の山として多くの登山者が訪れています。

今回は常念岳への代表的なルートのひとつ、一ノ沢ルートをご紹介します。

常念岳とは

標高2,857m、長野県の安曇野市、松本市に位置する山が常念岳です。

麓から見てもそれと分かる山容は、槍ヶ岳や周辺の山から見ても存在感があり、常念山脈のシンボルともいえます。

日本の登山史においてもその名を残しており、1894年に近代登山史に名を残すウェストン氏が初登頂され、1919年の常念小屋開業、1922年には日本百名山の選定者と知られる深田久弥氏が登頂されています。

また豊かな自然を有しており、高山帯に生息しているライチョウ、天然記念物のカモシカなどの動物が見られ、植物は高山植物が複数確認されています。

豊富な自然、登山史にその名を刻む常念岳は、古くから麓の人達に愛されています。
前常念岳の東北東斜面に現れる雪形は、田植えの時期伝えるものとして知られ、徳利を下げた坊さんの形から、常念坊と呼ばれています。

登山では北アルプス登山の入門として知られ、のんびり一泊で山頂を目指したり、ルートによっては日帰りも可能なことから、シーズン中は地元から遠方まで、多くの登山者が常念岳の山頂を目指しています。

今回のおすすめルート

今回は常念岳の東側、一ノ沢登山口から山頂を目指すルートをご紹介します。

一ノ沢ルートは、一ノ沢林道開通から閉鎖まで利用できる、常念岳登山の代表的なルートです。序盤は一ノ沢沿いを歩き、沢沿いの樹林帯を抜けると、常念山脈稜線へ向けての登りを経て、常念小屋がある常念乗越に到着します。

終盤は常念岳へ向けての登りとなり、岩場を越え緩やかな稜線を歩いた先に、常念岳山頂が待っています。

一ノ沢ルートの最大の魅力にして難所は、樹林帯を越えて常念乗越を目指すまでの雪渓で、見上げる常念山脈の稜線と相まって北アルプスの雄大な自然に吸い込まれそうになる最高のスポットです。

とはいえ、胸突き八丁と呼ばれる急斜面は、数歩歩いては息を整えたくなる難所で、ここを越えた後に「まだ山頂まであるのか・・」と、登山者の精神を根本からへし折りにかかってきます。

沢沿い、雪渓、稜線といった登山中に見る自然の様々な姿を楽しみながら山頂を目指せるのが、一ノ沢ルートです。

駐車場とトイレ

一ノ沢へのアクセスはマイカーが便利です。
駐車場は登山口から少し離れた場所に位置しており、ハイシーズンでは満車となる可能性もあるので、早めに到着するのがおすすめです。

トイレは登山口、常念小屋にありますが登山道にはないので、出発前に余裕を持って済ませておくのが良いです。

常念小屋

1泊での山行の場合は、常念小屋を利用します。

創業100年以上の歴史ある山小屋で、北アルプスの山々を目の前に、小屋泊からテント泊の利用ができます。常念岳と横通岳の間に位置する、常念山脈縦走の重要なポイントでもあります。

4月下旬頃から11月初旬頃まで営業しており、宿泊のほかにもガッツリした食事から軽食を摂ることもできる、常念岳登山には欠かせないありがたい山小屋です。

行程

コースタイム体力レベル技術レベル
11時間★★★★★★☆☆

今回は日帰りでの紹介となりますが、常念小屋を利用して1泊2日とすれば余裕を持った計画を立てることができます。日帰りといえども往復10時間を越え、登山口から山頂までは1,600m以上の標高差があるルートとなり、体力を要求されます。

早朝に出発し、天候が安定している内に登頂を目指すのがおすすめです。

序盤:登山口から樹林帯

登山口は一ノ沢林道にあります。今回はマイカーアクセスで、登山口から少し離れた駐車スペースに車を駐め、徒歩で登山口に向かいます。

登山口にはトイレ、登山届などが設置されており、準備を整えて出発です。

樹林帯は陽光が入る気持ちの良い登山道です。

足元は岩が多く多少歩きづらいところもありますが、急なところはなく、自分のペースでゆっくりと標高を上げていけます。

沢沿いを通るので、樹林帯と言っても周囲の光景に飽きることもなく歩けるのが嬉しいですね。

時期にもよりますが、一ノ沢林道が開通当初の4月下旬頃から登ると、樹林帯から積雪が見られるようになり、場合によってはチェーンスパイクがあると良いです。

徐々に景色が開けるようになり、気がつくと樹林帯を抜け、目の前には常念山脈の稜線と雪渓が広がります。

中盤:雪渓から常念乗越

一ノ沢ルートのハイライトである雪渓区間に入ります。この区間は時期によって夏道を使うか、沢を渡渉して雪渓に至るか、樹林帯を抜けたところから雪渓になるかなど、様々なシチュエーションが想定されます。雪渓が確実にある場合はアイゼンとピッケルを携行しておきます。

今回は、沢を渡渉して雪渓に取り付きます。

沢は勢いがあり岩も滑りやすいので、渡れるポイントを探して慎重に渡渉します。ストックがあると便利です。

渡渉して谷間を歩いていくと、徐々に積雪が多くなり、雪が深くなったところでアイゼンを装備します。

アイゼンを装備して雪渓を登ります。雪渓を踏み抜けば抜け出すのが困難になるので、時期によっては慎重に通過します。

夏道を横目に標高を上げていき、胸突き八丁の取り付きに到着です。ここで息を整え、気合を入れて登り始めます。

見上げると絶望しそうな急勾配と、一体どこまで登れば終わるのかと思うような距離がありますが「歩けば着く」という精神で着実に標高を上げていきます。

喘ぎながら登り、最後はトラバース気味に詰めれば、常念乗越に到着です。

常念乗越には常念小屋がある他、眼前には北アルプスの山々が「ようこそ」と言わんばかりに迎え入れてくれます。ここで絶景を堪能しながら行動食でエネルギーを補給し、最後の登りに向かいます。

終盤:稜線から山頂

常念岳へ向けての最後の登りに向かいます。見上げると山頂にも見える場所は常念岳ではなく、そこを越えた先に山頂があります。

岩場はところどころ不安定な場所があるので、浮き石かどうかをよく確認して、怪我をしないよう着実に登ります。

胸突き八丁で体力を消耗している時は焦らず登り、少し視点を変えれば北アルプスの眺望が広がっていますので、絶景に癒やされながら適宜息を整えて、気持ちを切らさずに山頂を目指します。

急な岩場を越えれば、山頂が目視できます。

近いようで遠いのが山頂手前アルアルで、目の前だと思うと時間が長く感じます。

遂に山頂に到達です。

山頂の背後には、遠くには乗鞍岳が見え、奥穂高岳、槍ヶ岳など、日本を代表する山岳地域を一望できます。

下山

下山は来た道を戻ります。

体力をかなり消耗しているので、転倒や滑落に十分注意します。特に胸突き八丁での滑落、雪渓の踏み抜きは細心の注意を持っておきます。

樹林帯まで戻れば安全圏内です。

下山後のおすすめ:ほりで~ゆ~四季の郷

往復10時間上の長丁場を終えたら、ほりで~ゆ~四季の郷で汗を流すのがおすすめです。

登山口から30分ほどの場所にあり、大浴場、露天風呂でのんびり湯に浸かり、身体を癒やします。

露天風呂からは常念岳が望め、正に常念岳登山の締めくくりにピッタリです。

常念岳登山で北アルプス登山に挑戦しよう

常念岳は、北アルプス入門の山であり、山頂までは沢や雪渓、稜線といった登山の様々なシチュエーションを楽しめるおすすめの山です。

山頂からは北アルプスの絶景が広がり、豊かな自然を愛で、山の歴史を想いながら見る眺望は、景色の奥にある山の奥深さを感じることができます。また山頂までには常念岳の歴史を象徴する常念小屋があり、安心した登山が可能です。

下山後には常念岳を望みながら温泉に浸かれば、常念岳登山がより充実した1日で締めくくれます。

常念岳登山で、北アルプス登山の第一歩を踏み出してみてください。