北八ヶ岳最高峰の天狗岳−黒百合ヒュッテで1泊ゆっくり登山をご紹介

山紹介

初心者からベテランまで多くの登山者を迎えている八ヶ岳。

その中でも歩きやすく八ヶ岳の多様な自然を五感で感じながら歩ける北八ヶ岳エリアは、八ヶ岳デビューに最適な山域です。今回は北八ヶ岳の最高峰にして、テント泊、雪山デビューなどに最適な山、天狗岳をご紹介します。

目次

天狗岳とは

夏沢峠を境に、北方に位置する八ヶ岳の山々を北八ヶ岳を呼び、その最高峰が天狗岳です。標高は2,646mで、西天狗岳、東天狗岳と呼ばれる2つのピークを持つ双耳峰であることが大きな特徴です。標高は西天狗岳が高く、八ヶ岳の主稜線を少し離れたところに位置しています。

麓からもそれと分かる山容は、北八ヶ岳の山々の中では険しく、引き込まれそうな魅力を持っています。また、山頂は北八ヶ岳の特徴である苔や深い樹林帯から突き出ており、まるで山頂を見つめるかのように樹林帯が頂きを取り囲んでいます。

登山は北方の麦草峠、南方の主稜線、西方の唐沢鉱泉、渋ノ湯、その他本沢温泉を経由していくなど、多種多様なルートからアプローチが可能です。

ルートによって難易度に若干の差はあるものの、どれも基本的な登山技術、経験があれば十分に登頂できる山であることから、初心者からベテランまで通年を通して訪れている人気の山です。

今回のおすすめルート

天狗岳登山の中でも特に利用されている登山口があります。天狗岳の西方に位置する唐沢鉱泉は天狗岳への登山口として多くの人が訪れ、西天狗岳に到達する西尾根と、黒百合ヒュッテ方面を目指す2つのルートがあり、周回ルートとして日帰り、もしくは1泊で楽しめることから、八ヶ岳登山口の中でも高い人気があります。

今回は初日はゆっくりと黒百合ヒュッテを目指し、2日目に天狗岳を登頂するプランをご紹介します。

唐沢鉱泉から黒百合ヒュッテまでは、緩やかに標高を上げる樹林帯の区間で、黒百合ヒュッテ以降は高山らしい視界の開けた区間です。序盤は八ヶ岳らしい豊かな自然と生物の存在を感じながらも静寂で、自分が自然に溶け合う様な時間がありながら、後半は八ヶ岳の雄々しく神々しい山々を望めるこのルートは、八ヶ岳登山の魅力をコンパクトに凝縮しています。

今回利用する黒百合ヒュッテはテント泊で利用しており、平地が多く泊まりやすく、登山口にも山頂にも程良い距離に位置している人気の山小屋で、天狗岳が通年を通して登山者が訪れる大きな理由となっています。

整った登山道、安全の基地となる黒百合ヒュッテ、八ヶ岳の山々の眺望など、1年を通して登山が楽しめるのが本ルートの魅力です。

駐車場とトイレ

登山口である唐沢鉱泉には、登山者専用の駐車場とトイレがあります。平日は比較的駐車しやすいですが、休日やハイシーズンは早めの到着がおすすめです。唐沢鉱泉利用者専用スペースには駐車しないようにします。

トイレは黒百合ヒュッテにもあるので、余裕を持って済ませておけば悩まされることはないです。

黒百合ヒュッテ

黒百合平に位置し、天狗岳を始め、八ヶ岳縦走登山時の要所として知られる山小屋です。

小屋内はとても整っており、山小屋の風情を十分に感じながらも、豊富なメニューのお食事からイベント、登山時に忘れがちな道具や記念品など、充実したサービスを受けられます。

情報をオンライン、現地で発信してくれるので事前の判断をするためにありがたく、八ヶ岳登山を思い出深く、そして安全に楽しめるためのスポットとしておすすめです。

行程

コースタイム(往復)体力レベル技術レベル
7時間★★☆☆★★☆☆

今回は黒百合ヒュッテでテント泊をしてのプランですが、無雪期は日帰りでも十分に登れるルートです。テントを設営し、ピークハントに必要な物だけを背負うので身軽に登れ、1泊するので天候が良いタイミングを狙って登頂できるメリットがあります。

厳冬期は天候、積雪量を始めとした状況にもよりますが、黒百合ヒュッテで1泊する方も多く、厳冬期登山の入門ルートとして人気があります。

初日:唐沢鉱泉から黒百合ヒュッテ

初日は唐沢鉱泉をスタートし、宿泊地である黒百合ヒュッテを目指します。唐沢鉱泉へはマイカーアクセスが基本となり、登山者専用駐車場に駐車します。事前に登山届を提出していない場合は、唐沢鉱泉の入口付近に登山届のボックスが設置されているので、こちらで記入して提出しておきます。

唐沢を横に見ながら歩きます。

橋を渡ると、樹林帯に入ります。ここから本格的な登山道の始まりです。

静かで、どこか落ち着く登山道。

既に1,900mを越えた地点にいるので、低山と異なり涼しく歩きやすいです。

残雪期は樹林帯でも雪が残っています。この日はアイゼンがなくても大丈夫でしたが、安全に登る場合はチェーンアイゼンや軽アイゼンを携行しておくと良いです。

渋の湯からの分岐を過ぎると、黒百合ヒュッテまでは1時間ほどです。

樹林帯を抜けると、本日の宿泊地、黒百合ヒュッテに到着です。

受付を済ませて、テント泊指定地の良きところに設営します。

初日はのんびり過ごしても良し、時間に余裕があり天候がベストな状況であれば、ここで山頂を目指すのも良いです。

山での時間は、明日に備える以外は特にやることがありません。情報やモノに溢れ、守られた現代に生きているので、こうした何もなく過ごす時間は、下山した後に一番記憶に残ることもあります。

山頂を目指す−登頂後は唐沢鉱泉へ下山

2日目は中山峠を経由し、東天狗岳、西天狗岳を目指します。黒百合ヒュッテに戻ってくるので、テントに不要な荷物は置いて山頂を目指せます。アタックザックを持っておけば、ベースキャンプからの登頂時に便利です。

中山峠以降、しばらく樹林帯が続きますが、勾配が急になり標高を一気に上げると、樹林帯を抜けて視界が一気に開けます。

厳冬期、残雪期はアイゼン、ピッケルを始めとした冬山装備が必要です。夏の場合でも風雨を防ぐ場所がないので、レインウェア、ヘッドライトなど基本的な登山装備は携行しておきます。

岩場は丁寧に登っていけば問題なく通過できます。

東天狗岳までもうすぐ。

登頂です。

眼前には北八ヶ岳とは異なる、禍々しくも神々しい南八ヶ岳の稜線が望めます。

登頂にウットリしたら西方に見える西天狗岳を目指すため、一度鞍部に降ります。

西天狗岳は間もなくです。

東天狗岳同様、静かな山頂です。

眺望は言うまでもなく見事なものです。

十分に休憩を取ったら、下山を始めます。

来た道を戻るので迷うことはありませんが、油断して怪我をしないよう慎重に。

黒百合ヒュッテに戻ったら、テントを撤収して唐沢鉱泉まで下山します。

下山後、時間があれば唐沢鉱泉でゆっくり湯に浸かるのがおすすめです。余裕のある行程なので、汗を流して気持ち良く帰路につけます。

下山後のおすすめ:テンホウ 塚原店

唐沢鉱泉で汗を流したら、登山で空っぽになったお腹を満たしたくなります。テンホウは、長野県にあるラーメンチェーンで、ラーメンの他、ご飯物や餃子など、登山後の身体にとっては夢のようなメニューが広がっています。

観光向けのお土産やスポットに立ち寄るのも良いですが、地元の人に愛されるお店に立ち寄るのもおすすめです。

個人的なイチオシメニューは、ご飯にもラーメンにも合う肉揚げです。

天狗岳登山で八ヶ岳の魅力を感じよう

北八ヶ岳の最高峰である天狗岳は、初めて八ヶ岳を登る人におすすめの山頂です。整った登山道、北八ヶ岳の自然、眼前に広がる神々しさを感じる眺望など、八ヶ岳の魅力を凝縮した登山が楽しめる山として、1年を通しておすすめしたい山です。

特徴的な双耳峰の山容は山域の中でも特徴的で、下山後に見るとより充実感を感じる魅力あるもので、天狗岳を登頂することで、八ヶ岳がとても愛着の湧く思い出深いエリアになります。

余裕のある行程を組めば、下山後は入浴、麓での食事も堪能でき、心も身体も満たされる充実した山旅となります。

天狗岳登山で、八ヶ岳の魅力を存分に味わってくださいね。