登山をしていると渓谷沿いに流れ落ちる滝を良く見かけるのですが、落差が数十m以上になる滝は滅多に見る事ができません。
愛媛県にある石墨山は標高1457m、皿ヶ嶺連峰の最高峰ですが、その登山口近くには唐岬(からかい)の滝と白猪の滝という、2つの名瀑があります。
愛媛県ゆかりの俳人、夏目漱石や正岡子規らも訪れていて、渓谷美を賞した句碑が残っています。
今回その2つの滝を巡りながら石墨山を目指すルートをご紹介しましょう。
石墨山登山ルート
コースタイム(往復) | 体力レベル | 技術レベル |
3時間 | ★☆☆☆☆ | ★☆☆☆ |
アクセス方法
公共交通機関(バス)
伊予鉄道横河原駅から河之内線に乗車、終点「白猪滝口」バス停下車(土日祝運休)
(登山口は唐岬の滝入口まで行かなければならないので注意、公共交通機関無し)
マイカー
松山自動車道川内ICから国道11号から494号へ
今回ご紹介する石墨山は、白猪の滝と唐岬の滝の2つを巡る徒歩ルートもありますが、道が険しく不明瞭な個所もあります。
唐岬の滝へのバスはありませんので、一般的にはマイカーを利用することになります。
まず白猪の滝を見学後唐岬の滝入口まで車で移動して、そのまま山頂を目指すルートをご紹介します。
1.厳冬期には滝全体が凍る「白猪の滝」へ
国道494号に入り、車で10分程すると白猪の滝への案内看板があるので、右折します。
そのすぐ先にトイレもある駐車場がありますので、そこから徒歩で白猪の滝を目指しましょう。
駐車場から白猪の滝までは徒歩で20分~30分です。
緩やかな登り坂になっていますが、途中の道は綺麗に整備されています。
舗装道から山道に変わってしばらく歩くと大きな水音が聞こえてきます。
そして落差96mの「白猪の滝」に到着です。
轟音と水しぶきで迫力満点ですが、氷点下の日が続く厳冬期になると滝全体が凍って氷の彫刻のような姿になります。
最近は地球温暖化の影響で、以前と比べて白猪の滝が凍る日数がかなり少なくなっているようです。
この氷瀑を見るには車の冬用タイヤやアイゼンなど冬山へ行く装備が必須ですが、その準備と手間をかけても見る価値は十分ありますよ。
この白猪の滝を訪れた子規と漱石が残した俳句がこちらです。
追いつめた 鶺鴒見えず 渓の景
正岡子規
雲来り 雲去る瀑の 紅葉かな
夏目漱石
2.白猪の滝から唐岬の滝へ
白猪の滝を満喫したら一旦駐車場に戻って、唐岬の滝へ向かいましょう。
唐岬の滝周辺にはトイレはありませんので、白猪の滝駐車場ですませてくださいね。
国道494号線を更に上がっていき、約10km先にある唐岬の滝案内看板周囲が少し広くなっているので、そこに車を停めましょう。
ただ国道494号線は途中から曲がりくねって見通しの悪い山道になります。
まれに対向から車も来ますので十分スピードを落として慎重に運転してくださいね。
なお駐車場から唐岬の滝へ行った後は一旦ここの駐車場へ戻りますので、登山装備は全て持っていく必要はありません。
服装と靴だけを準備しましょう。
ここから滝までは約500m(写真の右側下り坂を進む)ですが、白猪の滝への道と比較してかなり狭く、足場が悪い個所も多くなっています。
更に滝に降りる後半部分は急な崖状態になっているので、滑らないよう慎重に進みましょう。
そして唐岬の滝が木々の間から見えてきます。
滝全体を見通すことはできませんが、数段に渡って落ちる姿は華麗で優しく「女滝」とも呼ばれています。
上から一気に流れ落ちる白猪の滝と、ゆったり舞うように落ちる唐岬の滝との違いも楽しむことができます。
3.駐車場から石墨山へ
2つの滝を満喫したら、いよいよ石墨山へ向かいましょう。
唐岬の滝から一旦駐車場へ戻り、登山装備を揃えて出発です。
駐車場から舗装道路を少しだけ進んだ先の右側に登り口があります。
ここから石墨山へは約3.5km、歩行時間は約2時間です。
登りはじめてすぐの分岐を左に曲がって、しばらくはなだらかな道が続いている植林帯を進みます。
この一帯は地元東温高校の実習林となっているようで、登山道を含めて定期的に整備されているようですよ。
そして30分程植林帯を進むと、割石峠の分岐に到着します。
地図上の割石峠は更に300m程先にあるようですが、左側には東温高校の山小屋「石望山荘」があって、石墨山へは右へ進みます。
この割石峠分岐から次の分岐点までの道が、一番傾斜がきつく体力を使いますので、気合を入れていきましょう!
しばらくは植林帯を進みますが、次第に急な上り坂になっていきます。
笹が生い茂っていて足元が見えにくい個所もあるので、慎重に進みましょう。
そして最も傾斜がきつい道にはロープが設置されています。
写真からはなかなか分かりにくいのですが、実際はかなりの急角度なので、ロープをしっかりつかみながらゆっくり足場を確認しながら歩きましょう。
ロープ場をなんとかしのぐと視界が開けてきて、縦走路と分岐する道に着きます。
一気に視界が開けて、吹き抜ける風がとても気持ちよい休憩ポイントです。
遠くの松山市街の景色を堪能したら、石墨山へ最後のラストスパートです。
尾根沿いの道を進んでいくと、笹原の中にブナ林が続いています。
そしてその先には登山道を塞いでいるような岩場が待ち構えています。
一瞬ここが山頂?とも思いますが、石墨山山頂はもう少し先にあります。
この岩場からの景色も十分楽しめますよ
岩場を通りすぎると再び笹原とブナ林を進んで、最後の上り坂を越えると標高1457mの石墨山山頂に到着です。
山頂からは西日本最高峰の石鎚山をはじめとする石鎚連峰の大パノラマが広がっています。
この日は快晴で、石鎚山がくっきり見えました!
4.まとめ
夏目漱石や正岡子規らも訪れた渓谷美を楽しめる石墨山は、秋になると山全体が赤く染まります。
紅葉と滝という更に美しい景色を楽しみながら登山できるのです。
冬になると氷瀑や霧氷といった幻想的な風景に様変わりしますが、唐岬の滝や石墨山への道は標高が高いので、路面が凍結します。
最初にご紹介した白猪の滝を見るだけなら駐車場から片道20分~30分で行けますので、本格的な装備は必要ありません。
まずは白猪の滝にチャレンジして、興味が湧いてくれば暖かくなった春以降に唐岬の滝や石墨山へ出かけてみてはいかかでしょうか。
白猪の滝と唐岬の滝、2カ所の名瀑を巡る愛媛県の石墨山登山案内でした