一般大衆によるグループ登山の歴史は古く、例えば日本最高峰の富士山に関する文献を紐解くと、今から約300年前の江戸時代には「富士信仰登山」が一般市民の間で爆発的に流行し、いわゆる「富士講」のグループが既に存在していました。
また、それまでは登山口への徒歩アクセスが中心であった状況から、登山口までの交通機関の発達や生活水準の向上とともに、レジャー(近代)登山のために十分に組織化されたグループ登山(山岳会・職場や学校の山岳部等)が隆盛し今日に至っています。
このような18世紀~20世紀までのグループ登山の大きな流れのなか、21世紀に入ると情報通信技術の発達により、従来の組織化されたグループとは異なる、「登山者個人」が「情報システム」により結ばれた、新たなグループ登山の形式=「ソーシャルネットワーク(SNS)を介したグループ登山」が徐々に見られ始めるようになりました。
本記事では、Yamariiのデータをもとに、そのようなSNSを介したグループ登山の傾向を紹介していきたいと思います。
Yamariiを介して募集されたグループ登山の傾向
募集された登山の傾向①~山域~
是非一度は足を運んでみたい、3,000m級の日本の屋根「中部山岳」への募集が全体の約1/3を占めています。
日本国内にはもちろん無数の山々が存在しますが、登山雑誌やメディア等でも頻繁に取り上げられる人気エリアへの募集がよく見られます。
この「中部山岳」の募集先をさらに掘り下げると、「北アルプス」が全体の約半分と人気を博しており、さらには八ヶ岳の約2割、中央アルプスと南アルプスが各1割と続いていきます。
募集された登山の傾向②~山の標高~
上の円グラフは、募集された山の標高を6区分し、その割合を示した図になります。
森林限界を超える2,500m級以上の山が選ばれる割合は若干低くなりますが、それでも募集されている山の標高に大きな偏りは見られず、標高1,000m未満の低山から高山に至るまで、比較的バランス良く募集されているようです。
また、上の図「実際にマッチングが成立したグループ登山」においても傾向は似通っており、山域として中部山岳が全体の1/3を占めるといえども、総じて様々な標高への募集が投稿されており、個々人の登山スキルに合わせて行先を選択することができそうです。
募集された登山の傾向③~日本(深田)百名山~
深田久弥が選定した「日本百名山」は多くの登山者が集まる人気の山域です。
Yamarii上に投稿された約半数(46%)の募集山行は百名山であり、人気の山域への募集も多い状況となっています。
また、実際に「実施(マッチング成立)されたグループ登山」の百名山割合もほぼ同様で、「人気の山に低コストで参加してみたい」という方は一度検討をしてみる価値がありそうです。
Yamariiで実際に行われたグループ登山の傾向
~募集の開始日~
上のグラフは、「予定出発日の何日前から募集の投稿が開始されているか?」を示したものになります。
前日から3週間以上前に至るまで幅広く募集がなされていますが、特に「スマホ ✕ SNS」の利便性もあり、「出発3日以内」での募集投稿が全体の約40%を占めています。
また、全体の約70%が1週間以内の募集投稿となっています。
一方、上のグラフは「実際に実施(マッチング)されたグループ登山が何日前に投稿されたのか?」を示した図になります。
これによると、3日以内に募集が開始された山行は全体の25%程度にまで減少する一方で、2週間以上前に募集をかけたものは全体の30%近くまで増加しています。
この数字から、募集者として投稿する場合は、気持ち早めの時期での投稿をすることが山行実施(マッチング成立)の1つのポイントとなりそうです。
~行先とライドシェア機能~
Yamariiは、登山者同士のマッチング機能に加えて、登山口までのライドシェア機能も選択ができるアプリケーションとなっています。
ライドシェアを利用した主な行先には、「甲武信ヶ岳(2,475m)」「金峰山(2,599m)」などの名峰を擁する奥秩父を筆頭に、富士山周辺・北アルプス・八ヶ岳・北関東といった、比較的都市圏から一定の距離を伴い、かつマイカーによるアクセスが便利な山域が選択されていました。
一方、登山のみの機能を利用した主な行先には、首都圏近郊の「奥多摩」「南関東」を始め、近畿や東海周辺の大都市圏に隣接する山域で多く選ばれており、いずれも電車・バスでのアクセスが比較的容易な山域が上位を占めていました。
~集合場所からの流れ~
駅やバスターミナルを集合場所としているグループが全体の64%と過半数を占めておりました。
大都市近郊での山行においては、「登山口の最寄駅に集合しそのまま登山スタート」となるケースが比較的多く見られます。
一方、ライドシェア機能を利用した遠方への登山では、駅での参加者ピックアップを経て登山口まで向かうケースが比較的多く見られました。その他には、登山口あるいは登山者用駐車場で集合するケースがみられました。
おわりに
ここまで、SNSを介したグループ登山の傾向を「Yamariiを介して募集されたグループ登山」と「Yamariiを利用し実際に行われたグループ登山」の大きく2つのパート分けて紹介させていただきました。
是非皆様も、安全運転・安全登山でグループ登山を楽しまれてはいかがでしょうか。