雪崩ビーコンというものがあるのをご存知でしょうか。
2017年に学生を巻き込んだ悲惨な事件、「那須雪崩事故」で話題になったので、名前だけは聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
当時はビーコンを所有していれば助けられた命があったのではないかと指摘されました。
登山で雪山に登る方も多いと思いますが、ビーコンを所持せずに登る方も多いでしょう。
実際、スノーシューやアイゼンのようにビーコンはないと登山ができないものではありませんが、あるといざというときにとても役に立ちます。
今回はそんなビーコンについて、ビーコンの必要性について解説していきます。
雪崩ビーコンとは?
雪崩ビーコンとは、無線機の一種で雪崩で遭難した際に早く見つけてもらうために役立つアイテムです。
457kHzの微弱電波を利用し探知範囲は数十メートルになり雪に埋まった場合でも探知できます。
そのため、雪山登山の際は常にビーコンから信号を発信するようにしておき、万が一雪崩に巻き込まれてしまった場合は信号を頼りに救出してもらいます。
また、ビーコンの機能として自分の位置を知らせるだけでなく、雪崩に巻き込まれた遭難者を見つける際にも役立ちます。
雪崩が発生し、仲間が雪崩に巻き込まれてしまった際、ビーコンがあれば仲間の位置を特定し救出することができます。
このように雪崩ビーコンは発信と受信が基本的にはセットになっており、行動中は発信状態にしておき遭難者を救出する際には受信モードに切り替え電波を頼りに捜索します。
雪崩が発生したときに大活躍する、雪崩ビーコンはそんなアイテムです。
雪山で必須アイテムとはされていない?
冒頭でも述べた通り、雪崩ビーコンは登る際に必須なアイテムではないので雪山登山はできます。
例えばアイゼンやスノーシューは、それ自体がないとそもそも雪山には登れません。
しかし雪崩ビーコンがないからといって、雪山に登れないわけではありませんね。
雪崩ビーコンが普及しない理由として、そもそも雪崩というワード自体がどこか遠い世界のように感じられてしまうせいかもしれません。
しかし国土交通省によると、世界的にも有数の豪雪地帯である日本では毎年のように雪崩による死亡事故は発生しています。
雪崩は発生すると場合によっては時速200kmにも達し、雪自体が音を吸収してしまうので近づくまで気づかず、逃れることは不可能に近く衝撃も相当なものになります。
そして雪崩に巻き込まれた場合「どれだけ早く救出してもらえるか」が重要になります。
意外に感じますが、雪崩による事故の死因はほとんどが窒息死か外傷による死亡です。
意外にも低体温症による死亡は数%しかありません。
なかでも窒息死は全体の約7割を占めその多くが窒息死によるものです。
これはもちろん酸素を取り込めるスペースがないことが一番ですが、体温が下がると多くの酸素を必要とすることも起因しています。
そのため、どれだけ早く救出できるかはとても重要です。
データによると雪崩に巻き込まれ埋没した場合、救出が18分以内であれば生存率は91%以上ありますが、35分経過してしまうと生存率は34%まで下がってしまいます。
たとえ命が助かった場合でも、呼吸が停止していた時間が長い場合は低酸素脳症のため植物状態になってしまうような後遺症になる場合もあります。
これらのことから、雪崩ビーコンは雪山では必須のアイテムではありませんが雪山に登る際は持っていくべきアイテムとなっています。
雪崩ビーコンがないと入山できない山がある?
近年はバックカントリーの人気が上がっていることもあり雪崩事故が多くなっています。
そのため、雪崩ビーコンの所持をルール化する場所も出てきています。
例えば、日本有数の豪雪地帯である立山では、積雪期のルールにおいて、ビーコンの携帯を必須としています。
また、かぐらスキー場やニセコのスキー場でも、ビーコンの所持は義務化されています。
こえらの場所では、ビーコンチェッカーで確認するのでビーコンを所持していないとバックカントリーを行うことはできません。
安全のため今後もこの流れは続いていくと思います。
雪崩ビーコンには種類がある
雪崩ビーコンと一言で言っても、実は種類があります。
現在ではアナログ式、デジタル式の2種類があります。
ここでは、ビーコンの種類について解説します。
アナログ式
アナログ式の雪崩ビーコンは、アンテナが1本内蔵されています。
受信感度が良く、デジタルの物よりも広い範囲まで受信することが可能です。
しかし電波の特性上、強い電波が2方向検出してしまうこともありアナログ式ビーコンを利用して捜索するには十分な訓練が必要とされます。
その場合、電波の性質をよく理解し捜索する必要があるので玄人向けの商品です。
現在新品で販売されているビーコンはほとんどがデジタル式なため見かけることは殆どないと思います。
デジタル式
デジタル式の雪崩ビーコンは複数のアンテナが内蔵されており、アンテナの数が多いほど広範囲かつ位置の特定が容易になり、価格も高額になります。
受信感度はアナログに比べ劣りますが、位置の特定が容易なため生存率が高く現在の支流となっています。
そのため初心者でも比較的簡単に使用できるのがデジタル式となっています。
プローブ(ゾンデ)も必要
ビーコンで遭難者付近まで到達したら直径数メートル以内にいるものの、詳細な位置までは掘るまでわかりません。
雪崩後の雪は時には人の体以上のサイズがある塊なため、数メートル全域を掘っていて間に合いません。
そこでプローブという長細い棒を等間隔で突き刺し、埋まっている場所を特定しピンポイントで救出します。
雪崩ビーコンとプローブはセットと考えていいでしょう。
RECCO
スキーなどをする方はRECCOというのを見たことがある方もいるかもしれません。
RECCOは雪崩救助に使われるシステムでバックカントリーやウィンタースポーツが盛んな欧州では一般的に利用されていますが、日本においては電波法の規制などがあり導入が遅れておりましたがスキー場によっては導入されている場所があります。
RECCOは雪崩ビーコンと原理は同じで、雪崩ビーコン高精度に遭難者を見つけることができます。受信機は電池も必要なくリフレクターと言われる反射板を服やヘルメットに着けディテクターと言われる電波を発する装置で照射することで捜索します。
リフレクターは服やヘルメットに内蔵されていることが多いのですが、ディテクターを設置してるスキー場などは多くないためまだまだ日本には普及しておらず、登山では利用される事は殆どありません。
雪崩対策としては不十分なため必ず、雪崩ビーコンとゾンデが必要になります。
複数人の登山だとより生存率が高くなる
ビーコンは雪崩に遭難した際に、居場所を知らせてくれますが前述したように救助時間がポイントになります。
いくらビーコンを所持していてもソロで入山してしまうと最悪死亡後に発見という事になります。
そのため、雪崩の危険性のある山域で雪山登山する場合や、バックカントリーの場合は必ず複数パーティーで行くようにしましょう。
雪山は夏山と違った荘厳な景色を見せてくれ、それに魅了される登山者も多くいますがより安全に意識して雪山を楽しみましょう!