【八ヶ岳】最高峰・赤岳への難コースに挑戦~清里からの真教寺尾根と県界尾根コースを紹介~

山紹介

標高2,899mの赤岳は、山梨・長野両県にまたがる八ヶ岳連峰の最高峰となります。

森林限界のパノラマが広がっており、また日本百名山の一座でもある八ヶ岳は、多くの登山者を魅了してやみません。

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代表的なルートは、最短の長野県側・美濃戸(みのと)からのアプローチとなりますが、ここでは山梨県側の清里・美し森(うつくしもり)からのルートをご紹介したいと思います。

目次

コースのポイント

赤岳周辺は、どのコースからのアプローチでも急な登下降を伴う岩稜帯を通過します。

コース(登山口)所要時間(往復)累積標高差山のグレーディング
真教寺尾根(清里)9.3時間1,430m4D
県界尾根(清里)9.1時間1,430m4D
南沢(美濃戸)7.3時間1,230m3C
参考:北ア・燕岳7.8時間1,420m4B
〔出典〕信州山のグレーディング、山梨山のグレーディング

特に山梨・清里からの真教寺尾根・県界尾根コースは、長野・美濃戸側のアプローチよりも総じて難易度が高くなります。

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  • コース上の山小屋

山梨山のグレーディング」では、一泊以上が適当とされる体力度「4」となっています。

真教寺尾根・県界尾根コースともに、登山口を出発すると山頂の「赤岳頂上山荘」まで山小屋がありません。

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  • 一般登山道としては高い難易度

山梨山のグレーディング」では、真教寺尾根・県界尾根コースともに技術的難易度「D」とされています。

「不帰キレット(白馬岳~唐松岳)」、「八峰キレット(五竜岳~鹿島槍ヶ岳)」や「奥穂高岳(重太郎新道)」と同等にグレーディングされています。

アクセス

マイカー

  • 中央自動車道「須玉IC」より、国道141号経由で約20㎞。登山口横に無料駐車場、トイレ・水道があります。

電車・バス・タクシー

※バス利用の場合は、登山スタート時刻が午前9時以降となるため注意が必要です。

【バス・タクシー情報】北杜市観光協会:アクセス | ほくとナビ (hokuto-kanko.jp)

登山コース紹介

真教寺尾根・県界尾根コースともに、登山口から標高2,500m付近までは比較的緩い尾根歩きとなります。

しかし、そこから山頂までの区間は、高度感のあるガレ・クサリ・ハシゴが連続する険路となります。

清里・美し森~赤岳直下

スタートは、標高約1,500mの八ヶ岳山麓、清里高原・美し森になります。

市営駐車場を出発すると、観光用の「美し森展望台」までは整備された散策路を歩きます。

南アルプスを背景に、静かな朝の散策路を進む

展望台からは、今回の目的地となる赤岳の姿が小さく見えています。

美し森展望台より、雲をまとった赤岳山頂

道標に従いながら、展望台より約15分の場所にある「羽衣の池」を目指して出発です。

「羽衣の池」からは人の姿も少なくなり、いよいよ登山がスタートです。

股下までのササが生い茂る登山道。下山時はルートロスに気を付けたい。

約1時間のサンメドウズ清里「リフト山頂駅」付近までは、生い茂るササによりトレースが不明瞭な場所が見られます。

下山時のルートロスには注意が必要です。

途中の展望地より赤岳を望む

真教寺尾根のほぼ中間に位置する小ピーク、牛首山(2,280m)を目指して黙々と進んでいきます。

清里高原と富士山

牛首山まではだらだらとした樹林帯歩きとなりますが、所々の好展望地からは富士山も望むことができます。

真教寺尾根は、落ち着いて休憩できる場所が少ない(牛首山)

尾根の幅が徐々に狭くなり、天狗岩を過ぎると間もなく牛首山です。展望はもう一つですが、休憩に適したベンチもある平坦地です。

牛首山を出発すると、比較的なだらかな稜線歩きが1時間強続きます。

本日の八ヶ岳は黒いガスの中。高標高域では荒れた天気が予想される。

随所に露岩帯が見られるようになると、間もなく傾斜が険しい、危険個所を伴う核心部に入っていきます。

赤岳直下~赤岳山頂

標高2,500m付近より、ガレ・クサリ場が連続する岩稜帯の急登区間となります。

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  • ヘルメットの着用

落石・転落時の衝撃から頭部を守ることができます。

  • ストック・ザックの外付けをしまう

手足を使って進む三点支持の邪魔になるだけでなく、引っ掛かりが思わぬ事故につながります。

  • 先行者、後続者との連携

声を掛け合いながら、登り始めのタイミングを調整します。待機者は落石のラインに入らないなど、受傷事故の防止に心がけます。

手もと 足もと

まずは、角度・高度感を伴う滝状の岩場を通過していきます。三点支持を基本とし、クサリは補助的に使いながら登っていきます。

この日は濃いガスで岩が濡れており、非常にすべりやすいコンディション。

手がかり、足がかりは比較的はっきりしていますが、クサリを中心としたラインから外れると体勢が窮屈になります。

無理強いはバランスを崩し滑落の恐れがあるため、注意が必要です。

この先、山頂付近の美濃戸・文三郎道合流まで1時間以上の険路が続きます。

登り進むにつれて、手がかりや足がかりに乏しく、滑りやすい一枚岩状のクサリ場も連続します。

傾斜は険しく、浮石がそこかしこに見られます。誤って蹴り込んだ石は止まらないため、先行者は後続者に配慮し、後続者は前方からの落石に注意します。

今日は、残念ながら写真映えする八ヶ岳はお預け。

また、清里を出発した数時間前は晴れていましたが、徐々にガス・風ともに強くなってきました。

険しい岩場に咲いているシソ科の可憐な花(イブキジャコウソウ)

森林限界を超える高標域では、気圧も低いため呼吸が荒くなってきます。止まれる場所で息を整えますが、あいにくの風で身体はすぐに冷えてきます。

このような険しい区間であっても、植物はたくましく咲いています。

権現岳方面からの八ヶ岳縦走路(キレット)、美濃戸方面からの文三郎道と合流しながら岩稜帯をしばらく進むと、間もなく赤岳に到着します。

清里を出発して初めてのオアシス

展望はゼロ、風も強く登山者は少なめですが、こういう日もあるでしょう。

清里までの下山路も長いため、時間が遅ければ赤岳頂上山荘での一泊も検討したいところです。

赤岳からの下山

下山は、真教寺尾根に隣り合う県界尾根で下山していきます。

県界尾根は、赤岳頂上付近から分岐するコースで、登路で利用した真教寺尾根同様の険路となります。

ガスで見通しが悪いため、道標を確認しながら注意深く進みます。

下山開始直後より、浮石が多い急なガレ場に差し掛かります。

凹凸が少なく、手がかりに乏しいクサリ付きの岩場や、長いハシゴ区間を繰り返しながら高度を落としていきます。

濡れた岩場は、登り以上に神経を使います。

山頂から1時間程度急なガレ・岩場を繰り返します。「県界尾根6/10」の地点まで下ると、ようやく危険個所も少なくなってきます。

険路区間を終えると傾斜も徐々に緩やかになり、落ち着いた雰囲気のある樹林帯へと入っていきます。

ランドマークとなる大天狗を過ぎると、稜線からの降下点(小天狗)まで、1時間ほどの穏やかな区間が続きます。

小天狗から至近にある、「県界尾根3/10」からは清里方面に向かって曲がっていきます。

分岐から下方の沢(大門沢)方面に向かって下り続け、緑がまぶしいカラマツ林に入ると間もなく登山道も終了です。

道なりに進むと林道となり、30分強で登山口に到着となります。

重たい足を引きずりながら最後の車道歩き終えると、美し森の駐車場に戻り今回の山行も終了です。

県界尾根の入口は、うっそうとした森の片隅にある

下山後

清泉寮

避暑地・清里高原が近いため、下山後の立ち寄りスポットは充実しています。

緊張した登山から解放され、穏やかなひと時を過ごすことが可能です。

おわりに

以上、赤岳登山の難コースである、山梨・清里からの真教寺尾根・県界尾根コースを紹介させて頂きました。

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このコースは、日本アルプス3,000m級の岩稜帯に劣らない難路となります。万全な装備と準備、そして普段からのトレーニングを大切にしながら、ステップアップのコースとして選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。