【自然と歴史を巡る道】日本の長距離自然歩道を歩こう!

奈良県奈良市大柳生町_柳生街道(東海自然歩道)
中国

目次

自然と歴史を巡る道、長距離自然歩道

北海道_日本最北端・宗谷岬(北海道自然歩道)

長距離自然歩道は環境省が計画を定め、多くの人々が四季を通じて手軽に、楽しく、安全に自らの足で歩くことを通じて、豊かな自然や歴史・文化にふれあいながら、心身ともにリフレッシュし、自然保護に対する理解を深めることを目的とした歩道です。

テーマによって細分化されたコースは一日で歩くのに無理のない距離に設定されており、公共の交通機関などとも連絡しやすくなっています。
ハイキングコースから本格的な健脚コースまであり、各地の見どころを楽しく巡りながら、何日もかけて歩いたり、体力や時間に合わせてルートを選べるなど、様々な楽しみ方ができます。

日本一周(自転車)、日本縦断(徒歩)、東海自然歩道を完踏した私が、日本全国を巡る長距離自然歩道をご紹介します!

日本全国を巡る、10本の長距離自然歩道

1970年(昭和45年)に、高度経済成長の工業化による波から郊外の自然を守るという構想のもと、日本で始めて東海自然歩道が開通しました。その後、各都府県が主体となって整備をしています。

全国に張り巡らされた長距離自然歩道の総延長は、およそ28,000kmにも及びます。

日本をめぐる10本の長距離自然歩道(出典:環境省HP)

北海道自然歩道

全国で最も長い長距離自然歩道で、総延長は4,585kmになります。

広大な森林や湿原といった豊かな自然景観、広大な牧場や畑、防風林といった牧歌的な田園風景など、北海道を代表する地域の自然や歴史・文化などを結んでいます。

名称 北海道自然歩道
所属地方 北海道地方
経由
(1道)
北海道
総延長 4,585km(1位 / 10)
モデルコース数 23ルート
北海道松前町(北海道自然歩道)
北海道江差町(北海道自然歩道)
北海道_オロロンライン(北海道自然歩道)
北海道_オロロンライン(北海道自然歩道)
北海道_知床半島(北海道自然歩道)
北海道_知床半島(北海道自然歩道)
北海道_野付半島・ナラワラ(北海道自然歩道)
北海道_釧路湿原(北海道自然歩道)

東北自然歩道(新・奥の細道)

東北地方の豊かな自然や歴史・文化にふれ、健全な心身を育成するとともに自然保護に対する意識を高めるために整備された長距離自然歩道です。

名称 東北自然歩道(新・奥の細道)
所属地方 東北地方
経由
(6県)
青森県 / 岩手県 / 宮城県 / 秋田県 / 山形県 / 福島県
総延長 4,369km(2位 / 10)
モデルコース数 229ルート
スタート 福島県白河市 旗宿
ゴール 福島県郡山市
青森県_龍飛岬(東北自然歩道)
青森県八峰町_日本海(東北自然歩道)

東北太平洋岸自然歩道(みちのく潮風トレイル)

福島県相馬市〜青森県八戸市までの沿岸を結ぶ、森と海のどちらの恵みも感じることができる長距離自然歩道です。

森、里、川、海のつながりから生まれた美しい自然のなかを潮風にゆられながら進み、日本一美しい断崖やリアス海岸ならではの風景、恵み豊かな世界三大漁場など、海の景観をダイナミックに感じるスポットが豊富です。

名称 東北太平洋岸自然歩道(みちのく潮風トレイル)
所属地方 東北地方
経由
(8県)
福島県 / 宮城県 / 岩手県 / 青森県
総延長 1,025km(10位 / 10)
モデルコース数 28ルート
スタート 福島県相馬市
ゴール 青森県八戸市
岩手県山田町_山田湾(みちのく潮風トレイル)

中部北陸自然歩道

新潟県山北町〜滋賀県大津市までの中部北陸8県にまたがる旧街道の北国街道、三国街道、中山道をメインルートとした長距離自然歩道です。

雄大な山岳景観や日本海の景観などの多様性に富み、その地域の豊かな自然や歴史・文化に触れ、自然保護に対する意識を高めることを目的としています。

名称 中部北陸自然歩道
所属地方 中部地方 / 関東地方 / 近畿地方
経由
(8県)
新潟県 / 群馬県 / 富山県 / 石川県 / 福井県 / 長野県 / 岐阜県 / 滋賀県
総延長 4,091km(3位 / 10)
モデルコース数 178ルート
新潟県_親不知海岸(中部北陸自然歩道)
石川県_能登半島・禄剛崎(中部北陸自然歩道)
石川県_能登半島・白米千枚田(中部北陸自然歩道)
福井県_東尋坊(中部北陸自然歩道)
福井県_越前海岸(中部北陸自然歩道)

首都圏自然歩道(関東ふれあいの道)

東京都八王子市の梅の木平を起終点に、関東地方の1都6県を一周する長距離自然歩道で、美しい自然はもちろん、田園風景、歴史や文化にふれあうことができます。

高尾山、奥多摩、秩父、妙義山、太平山、筑波山、霞ヶ浦、九十九里浜、房総、三浦半島、丹沢などを結んでいます。

名称 首都圏自然歩道(関東ふれあいの道)
所属地方 関東地方
経由
(1都6県)
東京都 / 栃木県 / 群馬県 / 埼玉県 / 千葉県 / 神奈川県 / 茨城県
総延長 1,794km(7位 / 10)
モデルコース数 160ルート
スタート・ゴール 東京都八王子市 梅の木平
東京都_高尾山(関東ふれあいの道)
東京都 / 神奈川県_小仏城山(関東ふれあいの道)

東海自然歩道

緑豊かな自然と貴重な歴史文化財を訪ねながら、心身の健康と安らぎを得るための場として、1970年(昭和45年)に日本で初めて整備された長距離自然歩道です。

東京〜大阪の太平洋ベルト地帯の背後を結び、美しい日本の自然を心ゆくまで探勝できます。自然に親しむ現代版の“東海道五十三次”となっています。

名称 東海自然歩道
所属地方 関東地方 / 中部地方 / 近畿地方
経由
(1都2府8県)
東京都 / 神奈川県 / 山梨県 / 静岡県 / 岐阜県 / 愛知県 /
三重県 / 滋賀県 / 京都府 / 奈良県 / 大阪府
総延長 1,734km(8位 / 10)
モデルコース数 102ルート
スタート 東京都 明治の森・高尾国定公園
ゴール 大阪府 明治の森・箕面国定公園
東京都_明治の森高尾国定公園(東海自然歩道)
神奈川県(東海自然歩道)
静岡県島田市川根町上河内_茶畑(東海自然歩道)
静岡県島田市川根町上河内_茶畑を突っ切る道(東海自然歩道)
静岡県_秋葉神社・上社(東海自然歩道)
愛知県_段戸湖(東海自然歩道)
三重県_鈴鹿峠(東海自然歩道)
三重県_関宿(東海自然歩道)
三重県_青山高原(東海自然歩道)
奈良県_曽爾高原(東海自然歩道)
奈良県_山の辺の道(東海自然歩道)
奈良県奈良市大柳生町_柳生街道(東海自然歩道)
京都府宇治市_宇治橋(東海自然歩道)
大阪府箕面市_明治の森箕面国定公園(東海自然歩道終点)
大阪府_箕面駅(東海自然歩道終点)

近畿自然歩道

近畿を中心とした2府7県を通り、太平洋および瀬戸内海〜日本海とを結びます。

多様な自然にふれあい、その中で培われた地域の歴史・文化などを認識することを目的とした長距離自然歩道です。

名称 近畿自然歩道
所属地方 中部地方 / 近畿地方 / 中国地方
経由
(2府7県)
福井県 / 滋賀県 / 三重県 / 京都府 / 大阪府 / 兵庫県 / 奈良県 / 和歌山県 / 鳥取県
総延長 3,296km(4位 / 10)
モデルコース数 272ルート
京都府_天橋立(近畿自然歩道)
京都府_天橋立(近畿自然歩道)
京都府伊根町(近畿自然歩道)
京都府伊根町(近畿自然歩道)
兵庫県南あわじ市灘黒岩_淡路島(近畿自然歩道)
和歌山県御坊市(近畿自然歩道)
和歌山県_南紀白浜(近畿自然歩道)
和歌山県_橋杭岩(近畿自然歩道)
三重県_伊勢神宮(近畿自然歩道)
三重県_伊勢神宮・おかげ横丁(近畿自然歩道)

中国自然歩道

中国地方に残された豊かな自然の営みにふれ、郷土の歴史や文化遺産を訪ねることで、心身の休養と自然やふるさとへの理解を深める目的でつくられた長距離自然歩道です。

美しく豊かな自然から史跡や名勝・由緒ある社寺など、その地方の特色ある場所を通ります。ハイキングから本格的な登山道のような変化に富んだ組合せになっています。

名称 中国自然歩道
所属地方 中国地方
経由
(5県)
鳥取県 / 島根県 / 岡山県 / 広島県/ 山口県
総延長 2,295km(6位 / 10)
モデルコース数 130ルート
鳥取県_浦富海岸(中国自然歩道)
島根県_出雲大社(中国自然歩道)

四国自然歩道(四国のみち)

四国霊場や、各地に点在する身近な自然や歴史に親しみながら四国を一周することができる長距離自然歩道です。

名称 四国自然歩道(四国のみち)
所属地方 四国地方
経由
(4県)
徳島県 / 香川県 / 愛媛県 / 高知県
総延長 1,647km(9位 / 10)
モデルコース数 122ルート
スタート 徳島県鳴門市
ゴール 徳島県板野町
徳島県_四国八十八箇所霊場1番・霊山寺(四国自然歩道)
徳島県_四国八十八箇所霊場1番・霊山寺(四国自然歩道)
徳島県海部郡美波町_大浜海岸(四国自然歩道)
徳島県海部郡美波町_大浜海岸(四国自然歩道)
高知県_足摺岬(四国自然歩道)
高知県_足摺岬(四国自然歩道)

九州自然歩道(やまびこさん)

九州の山や高原・湖沼などの大自然と、史跡・文化財を訪ね、日頃失われがちな人間性の回復をはかり、あわせて体力の増進に役立てるために整備された長距離自然歩道です。

名称 九州自然歩道(やまびこさん)
所属地方 九州地方
経由
(7県)
福岡県 / 佐賀県 / 長崎県 / 熊本県/ 大分県 / 宮崎県 / 鹿児島県
総延長 2,932km(5位 / 10)
モデルコース数 91ルート
長崎県_平戸島・平戸大橋(九州自然歩道)
長崎県_生月島(九州自然歩道)
長崎県_生月島・生月大橋(九州自然歩道)
鹿児島県_枕崎駅(九州自然歩道)
鹿児島県南九州市頴娃町郡_瀬平自然公園(九州自然歩道)
鹿児島県_開聞岳頂上から望む海(九州自然歩道)
鹿児島県_本土最南端・佐多岬(九州自然歩道)
鹿児島県_本土最南端・佐多岬(九州自然歩道)

長い旅路の歩き方

長距離自然歩道は、体力やルートの難易度にあわせて自由に組み立てて歩くことができます。
(大人が歩く距離の目安は、平坦地で1日20kmほどです。)

自分に合ったルートを見つけよう

行き先を決めよう

ウェブサイトや観光情報などから、興味のあるスポットや歩いてみたいルートを探しましょう。

トレイルを歩いた経験が少ない人は、高低差や短距離のルートを日帰りで歩くのがオススメです。モデルコースは、見所や所要時間が分かりやすくなっています。

ルートの一部だけを歩く、幾つものルートを繋げて歩くのも自由です!

地図を見つけよう

行き先が決まったら地図を確認し、それを元に計画を考えます。

下記のサイトや実際に歩いた方々のブログを参考にするのも良いでしょう。長距離自然歩道の紙地図は販売されていないので、各自治体に問い合わせて送付してもらう必要があります。

現在はgoogleマップなどを利用できるようになり、ルートの詳細が分かりやすくなっています。ですが、常に更新されているわけではなく、あくまでも目安ということに注意が必要です。人があまり通らない道は自然災害などで荒廃したり、通行不能になっている可能性もあります。

道迷いなどの遭難防止のためにも、ウェブマップではルート概要の把握、現地の地図で現状を確認しながら歩きましょう

現地のマップで詳細を把握しましょう(東海自然歩道)
古い標識は、方向をしっかり確認!(東海自然歩道)

計画書をつくろう

計画書には、日程やルート、登山口までのアクセス方法、緊急連絡先も記載しておきましょう。計画書を家族や知人に渡しておくことで、万が一の救助対応などにも役立ちます

備えあれば憂いなし!

  • 紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによっても難易度が変化します。
    自身の体力に合わせた、無理のない計画で登山を楽しみましょう
  • 早く出発し、暗くなる前に下山する「早出早着」が登山の基本。
  • 出発前に登山道の状況や交通アクセスなどの最新情報を確認
  • もしもに備え、山岳保険への加入登山届は必ず提出
  • 地図・コンパス(方位磁針)、ヘッドランプを忘れずに。
  • 日帰り、初心者向きでも油断せず、十分な登山装備で入山。
    ザック、登山靴、雨具、防寒具、速乾性の衣類、行動食、非常食、水(最低1L)など。
  • 季節や場所を考慮し、歩きやすい服装を準備。
    時間帯によっても気温や湿度が変わるので、着脱しやすく、体温調節しやすい服装がオススメです。
  • クマの生息域ではクマ鈴の携行を。

登山を快適に楽しむために

  • 登山は自己責任が基本
    疲れたり体調が悪いときは、無理をせず引き返しましょう。
    行動中に天気が崩れそうな場合は、最寄りの舗装道路に出て、安全な場所に移動しましょう。事前に悪天候が予想される場合は、計画を中止する決断も必要です。
  • ストレッチで適度に体をほぐしてから、出発!
  • 焦らずゆっくり歩き、休憩は1時間に5~10分程度で。
    長時間の休憩は冷えの原因になります。
  • 定期的に水分補給と行動食を
    渇きや空腹を感じる前に水分と食料を補給し、疲れを防ぎましょう。
  • 下りは膝や足首、腰に負担がかかります。油断せず、急斜面は歩幅を狭めて歩きましょう。
  • 分岐は素通りせず、立ち止まって地図を確認しましょう。
    「こっちだろう」などの思い込みでの行動が、遭難の最初の一歩です。
  • 出会った人に気遣いを
    誰もが気持ちよく長距離自然歩道を楽しめるよう、ハイカーや地元の人に配慮した行動を心掛け、挨拶を交わしましょう。
分岐では立ち止まって地図の確認を!(山梨/静岡県境 東海自然歩道)

自然を大切に

  • 動植物を持ち帰らない。とって良いのは写真だけ。
  • ゴミは家まで持ち帰りましょう
  • 火の取り扱い注意!
    山火事の恐れなどがあるので、山では原則禁煙です。
  • ルートを外れない
    登山道から外れる、人の敷地、危険箇所などには入らないようにしましょう。

おわりに

鹿児島県_本土最南端・佐多岬(九州自然歩道)

総延長 約28,000km、圧倒的な距離を誇る長距離自然歩道。

長い歴史の中で、一つ一つの道にモノや人との交流があり、それが文明や文化の発展を支えてきました。現代になっても、その役割や面影は残っています。

かつては人々の往来で賑わった道も、今となっては歩く人も少なく、その多くは整備や管理が追いついていないのが現状です。また宿泊の問題など、スムーズに歩けない箇所も多々あります。しかし、そこをどう乗り越えるのかがハイカーの醍醐味でもあります。

ルートを厳密に辿らず、体力や時間に合わせ、迂回したり飛ばしたりするのも自由です。ハイカーが増えるほど長距離自然歩道への認知度も高まり、より多くの情報が共有できるようになります。

千里の道も一歩から。
自然と歴史を巡る道、ロマンあふれる長距離自然歩道を歩いてみませんか?


参考HP