【美濃戸から阿弥陀岳】コンパクトに楽しめる八ヶ岳の名峰へのルートをご紹介

山紹介

長野県、山梨県に位置する山岳地域、八ヶ岳。
南北に連なる山々は、豊かな植生と歩きやすいエリアの北八ヶ岳、主峰の赤岳が座している峻険な岩峰が続く南八ヶ岳に分かれ、初心者から上級者まで、1年を通して登山者が訪れています。
今回は厳しい岩稜が続く南八ヶ岳の中でも赤岳と並ぶ人気のピーク、阿弥陀岳をご紹介します。

目次

阿弥陀岳とは

標高2,805m、八ヶ岳最高峰、赤岳の西方に位置しているのが阿弥陀岳です。

八ヶ岳連峰の中で赤岳、横岳に次ぐ3番目の高峰にあたり、南八ヶ岳の一座に相応しい威厳ある山容を持っています。山頂には阿弥陀如来像が奉じられ、山名にもある通り、山岳信仰の歴史を感じさせます。

赤岳と見紛うほどの堂々たる姿を持ちながら、八ヶ岳南北縦走路から離れた位置にあるため、赤岳と比較して登山者は少なく、登山道も赤岳周辺と勝るとも劣らない難しいルートのため、静かで迫力ある登山が楽しめるのが特徴です。

眺望は周辺に赤岳以外に高峰が存在しないので非常に開けており、南八ヶ岳南方に位置する権現岳、南八ヶ岳の縦走路を始め、八ヶ岳が抱く原村、茅野の里を眼下に収められます。

山頂までは御小屋尾根と中岳方面から向かう2つのルートがあり、中岳方面からは登山者が最も多く、3シーズン時のメインルートとなります。
この他、南陵、中陵、北陵、北西陵などのバリエーションルートがあり、力量に応じた登山が楽しめることもあり、1年を通して登られています。

私が初めて阿弥陀岳を登ったのは代表的な中岳方面からのルートで、標高を上げるほどに広がる世界がなんとも気持ち良く、遠くから見ても恐怖を感じるほどのピークに立てたことの喜びは、今も色褪せることなく脳裏に刻まれています。

今回のおすすめルート

今回は南八ヶ岳の登山口の一つの美濃戸をスタートし、八ヶ岳で随一のベース地である赤岳鉱泉を経て山頂を目指すルートをご紹介します。

赤岳鉱泉以降、行者小屋を過ぎて阿弥陀岳分岐にたどり着き、続いて中岳のコルからは険しい岩場を登り、岩場を抜けて山頂に至ります。

豊富な登山経験と装備を絞っていけば日帰りも可能なルートですが、初めて八ヶ岳を登る方やのんびりと歩きたい方には、赤岳鉱泉での小屋泊、テント泊という選択肢もあり、体力や目的に応じて臨機応変な計画を立てることができるのも魅力です。

赤岳鉱泉以降は片道2時間半程度で登頂できますが、ダイナミックな八ヶ岳の稜線を望め、中岳のコル以降は高度感もある清々しいルートなので、南八ヶ岳の魅力をコンパクトに、かつ濃厚に感じられるおすすめのルートです。

阿弥陀岳単体で目指すのも良いですが、体力に余裕があれば、赤岳とセットで縦走する周回ルート、十分な時間があれば硫黄岳からの縦走を経て、締め括りとして阿弥陀岳を登るなど、多彩な登山計画が立てられ、阿弥陀岳が長く八ヶ岳の人気のピークであることのポイントとなっています。

駐車場とトイレ

美濃戸へのアクセスは、美濃戸の手前にある美濃戸口から徒歩で美濃戸に向かうか、マイカーで直接美濃戸までアクセスすることが可能です。

3シーズンは一般的な車両でもアクセスが可能ですが、積雪時は4WDで冬の険しい難路に対応できる車両であることが必須となります。紅葉や特定シーズンは非常に混み合うので、事前に駐車場の予約や夜明け前の到着が必要となります。

トイレは美濃戸口、 美濃戸、赤岳鉱泉、行者小屋での利用が可能です。

赤岳鉱泉

八ヶ岳登山で、特に硫黄岳、横岳、赤岳、阿弥陀岳方面に登る際のベース地となる山小屋です。

通年営業で小屋泊、テント泊が利用可能な山小屋で、入浴もできるというのも赤岳鉱泉の大きな特徴です。

施設はとても整っていて利用しやすく、水場も完備しているので、私は八ヶ岳登山で上記の山頂を目指す際は必ず赤岳鉱泉を利用しています。

赤岳鉱泉からは阿弥陀岳を望むことができ、これからの登山への期待を抱きながら、八ヶ岳の大自然の中で一夜を過ごせるという贅沢を味わえ、ベースキャンプに相応しい山小屋として登山者に愛されています。

冬は人工氷瀑のアイスキャンディが設置されアイスクライミングが楽しめたり、小屋泊では名物のステーキが堪能できることもある等、入浴を含め、山頂を目指すだけではない楽しみが目白押しなのもポイントです。

行程

コースタイム体力レベル技術レベル
9時間★★★★★★✩✩
出店:ヤマプラ

今回は赤岳鉱泉を経由したルートとなっており、美濃戸からであれば日帰りでも計画を立てることが可能です。
一泊二日の行程であれば、稜線縦走にも行きやすく快適に過ごせる赤岳鉱泉がおすすめですが、阿弥陀岳、もしくは赤岳とのセットで目指すのであれば、赤岳鉱泉を経由せず行者小屋を目指すルートが良いです。

序盤:美濃戸から赤岳鉱泉

美濃戸に車を停め、赤岳鉱泉へ向かいます。

歩きやすく舗装された道を、森林浴をしながら歩きます。

沢沿いになると本格的な登山道となり、沢音を聴きながら気持ち良く歩を進めます。

沢を何度か渡り樹林帯を抜けると、突然赤岳鉱泉が姿を表します。

「ここがあの伝説の・・」と言いたくなるような突然の出現で、ここまで背負ってきたザックを自然と下ろして、しばし休憩したくなります。宿泊装備の場合は「着いたぁ!」という声を上げてしまいます。

終盤:赤岳鉱泉から山頂

宿泊の場合は赤岳鉱泉で受付を済ませ、荷物を絞って山頂を目指します。

行者小屋までは樹林帯を歩きます。

樹林帯を抜けると行者小屋に到着です。

ここからは赤岳、阿弥陀岳が望めます。

行者小屋を過ぎ、阿弥陀岳分岐を目指します。

赤岳との分岐を阿弥陀岳方面に向かいます。

標高を上げていくと、徐々に南八ヶ岳稜線の姿が見えてきます。いつ見ても迫力ある八ヶ岳の稜線は、立ち止まってずっと眺めていられます。

中岳のコルに到着です。ここで一息ついて、目の前の阿弥陀岳の岩場に取り付きます。

岩場は慎重に。

ダイナミックな赤岳。うっとり。

厳しい岩場を抜けると、阿弥陀岳山頂に到着です。

360度、どこを見渡しても絶景です。

下山

眺望を堪能しながら休憩したら、下山を始めます。

行程を通しての核心は下山時の岩場で、中岳のコルまでは、上り以上に集中力を高めていきます。疲労でバランスを崩しやすいので、浮き石がないか、しっかりスタンスがあるかなど、基本的な岩場での動きを忘れずに。

中岳のコルまで戻れれば安全圏です。

下山後のおすすめ:もみの湯

美濃戸口から程近い所にある温泉です。広々とした館内は清潔感があり、温泉も風情がありゆっくりと浸かれます。営業時間も朝から夜まで営業しているので、下山時刻をあまり気にせず利用できるのも嬉しいポイント。

魅力ある温泉が点在する八ヶ岳。山の魅力を温泉を通じて感じるのも、阿弥陀岳登山の締め括りとして最適で、気持ち良く帰路につくことができます。

阿弥陀岳登山で南八ヶ岳の魅力をコンパクトに楽しもう

阿弥陀岳は峻険な山々が連なる南八ヶ岳エリアを代表する山で、日帰りから宿泊、多彩なルートで1年を通して登られている人気の山頂です。

恐怖さえ感じる厳しい山容を持ちながらも、その恐怖の裏にある美しさも同時に纏っており、岩場を経て山頂に至る感動は、阿弥陀岳ならでは。そして頂から見る八ヶ岳連峰、麓の景色は阿弥陀岳からしか見ることの出来ない特別なもので、一度見たら忘れることのない絶景です。

八ヶ岳の自然と頂上からの絶景をコンパクトに堪能できる阿弥陀岳。下山後の温泉と合わせて、阿弥陀岳の魅力をたっぷり味わってみてください。