【北アルプス】蝶ヶ岳のルート詳解と紅葉

山紹介

蝶ヶ岳(ちょうがたけ)は、北アルプス南部の槍・穂高連峰と並行して南北に連なる常念山脈の中ほどに位置する標高2,677mのピークになります。山頂はなだらかな地形の森林限界で、晴れた日には正面に鎮座する穂高岳や槍ヶ岳といった人気の山々を一望できることから、常念岳や燕岳とともに非常に人気の山となっています。

本記事では最新の紅葉情報にもスポットを当てながら、安曇野側からの三股(みつまた)ルートの最新の登山レポートをお送りしていきます。

目次

蝶ヶ岳、三股ルートの概要

蝶ヶ岳三股ルートは標高約1,350m付近の三股登山口から標高2,677mまで一気に登るルートになります。

比較的整備も行き届いており、途中に三点支持を要するクサリ場等を通過しないことから、蝶ヶ岳ヒュッテでもオススメとされている最も一般的なルートです。

また、同じ常念山脈の燕(つばくろ)岳とともに、北アルプスの入門コースとしても紹介されています。

PIXTA

コースは全体的に樹林帯の登り一辺倒になりますが、山地帯~亜高山帯の植生の移ろいとともに、9月中旬~10月中旬にかけ紅葉を楽しむことが出来ます。

要所々々にはベンチも設置されており、小休止の際には腰かけることもできます。

ダケカンバの黄葉もそろそろ始まる中秋

コース核心部は中盤の「まめうち平」を過ぎた標高2,100m付近からとなり、山頂直下までの標高500m差の急登を一気に登って行きます。
その反面、木々の間からは所々展望も開け、紅葉と一緒に特に松本盆地や常念岳方面の稜線展望を楽しむことができます。

全域が中部山岳国立公園となり、特に稜線付近は特に環境への配慮が必要な特別保護地区に指定されています。

日本百名山・国立公園等の分類リスト

区間別のコース紹介(前半、後半、稜線付近)

ヤマプラに加筆
コースタイム(三股登山口~蝶ヶ岳)のぼり290分、くだり190分(三股登山口~駐車場間は+15分)
登山口標高約1,300m(三股登山口)
最高点2,677m(蝶ヶ岳)
Yamariiグレード(往復)体力レベル★★★★ 技術レベル★★☆☆
信州山のグレーディング (往復) 体力度4、技術難易度B
状況レポート
駐車場林道終点付近に2箇所(車道終点の第1駐車場とそこから15分ほど下った第2駐車場)あります。9月3連休の中日(初日は台風接近の雨天)で、第1駐車場は深夜で既に満車、第2駐車場も明け方には既に満車となっておりました。
備考
※同じ常念山脈「燕岳」登山口となる中房温泉駐車場は深夜で既に満車となり、市街地側約12㎞下った有明山登山者駐車場に誘導、シャトルバス利用となる状況でした。
 
紅葉9月19日:山頂直下(標高2,500m)付近でそろそろ見ごろ。紅葉の底部は標高2,000m付近(一部色づき始め)。標高2,300~2,500m付近ではカバノキ科の黄葉が始まっておりました。
トイレ三股第1駐車場および三股登山口、蝶ヶ岳ヒュッテの3か所にあります。コース中盤にお手洗いはないことから、携帯トイレがあると安心かもしれません。
幕営地あり(蝶ヶ岳ヒュッテ)、正午前で混雑

三股登山口

三股第1駐車場から林道を15分程歩いた地点で、登山相談所に登山届が提出できます。

蝶沢と常念沢が合流した本沢沿いの一角に設けられており、水流の音と森の香りを肌で感じながら最終準備・確認ができます。

【前半】三股登山口~まめうち平(標高約1,900m)

三股登山口から登山道は分岐する

登山口をスタートすると、すぐに常念岳方面との分岐が現れます。

蝶ヶ岳・常念岳まではいずれも6~7㎞と比較的長いアプローチとなりますので、体調を十分に整えてからいざ出発!

安曇野・わさび田(PIXTA)

ほどなくして、本沢をつり橋で渡ります。

本沢は下流で烏川と名前を変えたあと、安曇野・穂高の「わさび田」付近で梓川や高瀬川と合流し、日本海方面へ流れていきます。

この本沢を渡ると、いよいよつづら折りの本格的なのぼりとなってきます。

植生豊かな登山道

つり橋から15分ほど登ると、いずれも小休止のスポットとなる水場(力水)や怪獣の名前のついた有名な樹形を横目でみながら、中間地点「まめうち平」までの急登が始まります。先はまだまだ長いので、身体を慣らしながらゆっくりと登って行きます。

また、小さなステップの構造型階段が随所に設けられており、急斜面を突破する手がかりとして整備されております。(急なため、下りの場合は階段での転倒に要注意です。)感謝!

コース中盤のまめうち平、ここから山頂までの急登に備え、一服用のベンチもある

さて、三股登山口を出発してから約2時間、徐々に傾斜が緩やかになると中間地点の休憩スポット「まめうち平」に到着します。もちろんベンチもあるので腰を掛けられます。

あまり有名ではありませんが、周辺は目的地の蝶ヶ岳付近を水源とする蝶沢を中心とした逆お椀型の地形「蝶ヶ岳カール」の底部付近とされております。

カール(圏谷;けんこく)
氷河が山肌を削ってできた、スプーンでえぐり取ったような地形。底部には運ばれた岩などが堆積(モレーン)している。木曽駒ケ岳(中央アルプス)付近の「千畳敷カール」や穂高岳付近の「涸沢カール」などが有名。
  スプーンカット状の地形が特徴の涸沢カール(PIXTA)

「まめうち平」付近はこんもりと盛り上がっている場所がありますが、関連文献によると、これは氷河に運ばれたモレーンの痕跡と言われています(付近の地形図を確認すると、10m等高線で囲われている部分)。

通常、カールというと森林限界を超えた稜線付近のイメージがありますが、この「蝶ヶ岳カール」は土砂堆積後、比較的安定状態を保っていたため、亜高山帯の針葉樹(シラビソ・ツガ類)で被覆されているそうです。

【後半】まめうち平~蝶ヶ岳(2,677m)

珍しい樹林帯内のカールを行く登山道、日陰は肌寒い

さて、再出発すると、しばらくはカール内の比較的平たんな針葉樹林の中を進んでいきます。

9月中旬という季節柄、平野部ではまだまだ残暑が残る季節ですが標高2,000mの日陰は日中でもひんやりとした空気に包まれています。

10分程歩くと傾斜が徐々に急になり始め、後半の核心部へと入っていきます。

核心部は構造型階段とつづら折りの登山道の急登となります。

空気も徐々に薄くなってくることから、立ち止まって息を整える登山者の姿も多く見られます。

登山道も楽にすれ違えるほど広くはないので、譲り合いの精神で密にならないよう配慮が必要かもしれません。

秋色の常念岳を眺める

所々、木々のスキマから常念岳方向の展望も開けます。

三股からの常念岳ルートや常念沢の急峻な浸食谷が美しい山岳風景を作っています。

標高2,400m付近になるとダケカンバやシラカバなどの黄葉や、赤い実をつけたナナカマドも徐々にみられるようになり、青空とともに風景のアクセントとなっています。

振り返ると、標高約2000m下の安曇野が一望できる

まめうち平から2時間半ほどで、徳本(とくごう)峠・大滝山方面からの稜線登山道と合流し、ハイマツ地帯の森林限界に到達、視界も一気に広がります。

ここから山頂までは約20分程度の最後の登りとなりますので、もうひと踏ん張りです。

蝶ヶ岳は槍・穂高連峰を一望できるビュースポット

右手に常念山脈の稜線を眺めながらハイマツの中を進むと、ほどなくして前方に槍・穂高連峰の雄大な山岳展望が現れ、蝶ヶ岳ヒュッテに到着となります。

なだらかな蝶ヶ岳山頂は、ヒュッテから5分ほどの場所になります。

【稜線付近】蝶ヶ岳~蝶槍までの稜線漫歩~

蝶ヶ岳ヒュッテ・幕営地を中心に槍ヶ岳と常念岳

蝶ヶ岳ヒュッテ横の安曇野側には展望のよい幕営地があり、この日は正午前にメインのスペースがほぼ満員となっておりました。水場はありませんが、1リットル200円で販売されております。

蝶槍と常念岳を望む(PIXTA)

蝶ヶ岳山頂から常念岳方面へ50分ほどの蝶槍付近までは、比較的なだらかな稜線漫歩を楽しむことが出来ます。

ヒュッテ付近にザックをデポし、ピストンする方も多くいらっしゃいました。一見すると近くに見えますが、往復で2時間近く要すため体力や天気との相談次第といったところです。

幅が広く、なだらかな蝶ヶ岳付近の登山道。写真は有名な二重稜線。

ところどころ稜線幅が広い場所がありますので、ガスが出ているときにはルートロスに注意です。また、近年利用者の増加している山岳地域でのドローン飛行には届出が必要になりますので、自然環境に十分配慮しながらマナーを守って楽しむことが大切です。

おわりに

以上、北アルプス常念山脈「蝶ヶ岳」の紅葉情報&三股コース登山レポートをお送り致しました。

稜線付近では紅葉が最盛期を迎えつつある場所もありますが、中腹などの樹林帯では、まだまだこれから紅葉を楽しめそうです。

季節柄朝晩は冷えこむため、防寒対策やガスバーナーなどの準備をしっかりとしたうえで、紅葉の日本アルプスに挑戦をしてみるのはいかがでしょうか?