モンベルのレインウェアが変わる

モンベル50周年の節目に、レインウェアラインアップが大きく変更されることが発表されました。
モンベルのフラッグシップレインウェアでもある「ストームクルーザー」をはじめ、人気のレインウェアの素材が一新され、Gore-texモデルに新しい顔ぶれが登場します。
モンベルのレインウェアがどう変わるのか、元生地屋の筆者が予想していきます。
Gore-tex使用モデル
これまであったモンベルのGore-texレインウェアが一掃され、3種類のレインウェアが新しく登場します。
テンペストジャケット

20デニールGore-texファブリクス3レイヤーを使用したレインウェアです。
20デニールの3層なので、旧ストームクルーザーと同じ立ち位置のレインウェアだと推察されます。
旧ストームクルーザーから大きく変わった点は、ベンチレーションが付いたことです。
これまでのモンベルレインウェアの中でベンチレーションが付いていたのは、トレントフライヤーだけでした。
ですがこの度テンペストジャケットにもベンチレーションが追加されます。
耐水圧・透湿性能の記載はないですが、Gore-texフィルムを使用していると言えど蒸れます。
手っ取り早く蒸れを解消できるベンチレーションが付いたのは、嬉しいアップデートです。
ピークシェルジャケット

15デニールGore-texファブリクス3レイヤーを使用したレインウェアです。
3層にはなりましたが、旧トレントフライヤー(2.5層)と同じような立ち位置であると考えられます。
こちらもベンチレーションが付いています。
ベンチレーションが付いているモデルに選択肢ができたので、軽量性重視か、耐久性と軽量性のバランス重視かでレインウェアを選べます。
レイントレッカージャケット

50デニールGore-texファブリクス3レイヤーを使用したレインウェアです。
50デニールの3層なので、旧レインダンサーの立ち位置でしょう。
テンペストジャケットとピークシェルジャケットが3万円を超える中、レイントレッカージャケットは29,200円とGore-texレインの中で最安値のモデルです。
厚手の生地なので着心地と軽さは犠牲になりますが、耐久性に特化しています。
こちらはベンチレーションが付いていないので、蒸れへの対策は上記2つのレインウェアより劣ります。
スーパードライテック使用モデル
2024年に新しく登場したばかりのモンベル独自透湿防水素材「スーパードライテック素材」を使用したレインウェアも大幅な変更がされています。
スーパードライテックピークシェルジャケットとスーパードライテックレインジャケットがアウトレット行きになり、3つのモデルが新しく加わりました。
ストームクルーザージャケット

なんとモンベルのレインウェアをけん引してきた「ストームクルーザー」が、Gore-tex素材からスーパードライテック素材に変更されました。
耐水圧50,000mm以上、透湿性能40,000g/m2/24hrsと高い数値をうたっています。
旧ストームクルーザーが20デニールの3層だったのに対し、新ストームクルーザーは30デニールの3層素材に変更されました。
ですが重量は254gとまったく同じに抑えてきているので、生地が分厚くなった分、重量は抑えながらも耐久性は向上しています。
トレントフライヤージャケット

こちらもGore-texレインウェアにあった人気のモデルが、スーパードライテック素材に変更となりました。
Gore-texモデルの頃はベンチレーションが付いていましたが、素材変更によりなくなっています。
重量は旧モデル194gに対して、新モデルは186gと軽量化がなされています。
バーサライトジャケット

こちらはGore-texウィンドストッパーを使用した超軽量モデルが、スーパードライテック素材になりました。
旧モデルは10デニールの表地にGore-texウィンドストッパーを使用し、重量134gでした。
一方新モデルは7デニールの表地にスーパードライテック素材を使用しています。
表地は薄くなりましたが、重量は143gと少し重たくなりました。
Gore-texウィンドストッパーはかなり薄いメンブレンだったため、ジャケット重量全体を軽くできていました。
ですがそれよりもスーパードライテック素材のメンブレンが分厚くなったため、重量は重たくなったのだろうと考えられます。
Gore-texとスーパードライテックの違い

ストームクルーザーやトレントフライヤー、バーサライトといった人気モデルが、軒並みスーパードライテック素材に変更される事態となっています。
そうなると気になるのはスペックです。
Gore-texとスーパードライテック素材の耐水圧・透湿性能を比べてみましょう。
耐水圧 | 透湿性能 | |
Gore-texストームクルーザー | 50,000mm以上 | 35,000g/m2/24hrs |
スーパードライテックストームクルーザー | 50,000mm以上 | 40,000g/m2/24hrs |
耐水圧は同等ですが、透湿性能がスーパードライテック素材になり、5,000g/m2/24hrs向上しています。
ではスーパードライテック素材の方がGore-texより優れるのかと言うと、そうとは言い切れないんです。
Gore-texは疎水性のフィルムで、水蒸気を通す微細な穴が無数に開いています。
一方スーパードライテックは明確な記載はありませんが、親水性の穴が開いていないフィルムだと考えられます。
上記の透湿性能の数値はB-1法と言われる試験方法で測定されています。
B-1法で試験をする場合は、素材がどれだけ水蒸気を吸って透過させるかの試験になるため、水(水蒸気)を引き寄せやすい親水性のフィルムの方が一般的に数値が高く出るんです。
では実際フィールドで着た際にどちらが快適かと言うと、おそらくGore-texの方が快適でしょう。
イメージしやすいのはスーパードライテック素材は、スポンジのように水(水蒸気)を吸い込んでくれます。
ですがある程度の水を吸い込むと飽和状態となり、それ以上の水を吸い込めなくなって透湿性能が機能しなくなるんです。
一方Gore-texはフィルムに穴が開いており、その穴を通って水蒸気が出ていくので飽和状態になる可能性が著しく低くなります。
実際に着用してテストしたわけではないのであくまでも推測ですが、数値だけを見てスーパードライテック素材の方が良いと判断するのは早計です。
Gore-texフィルムも変わる

Gore-texフィルム自体も変革の波が来ています。
世界的にフッ素は環境に悪いという認識が広まっています。
その流れもありGore-texでもフッ素を使用したePTFEフィルムから、非フッ素のePEフィルムに生産がシフトしてきているんです。
実際アークテリックスのベータジャケットが2024年にいち早くePEフィルムを採用しており、2025年春夏モデルから他のアウトドアブランドでも採用され始めています。
モンベルも例外ではなく、既に発売されているレイントレッカーはePEフィルムに変更されているんです。
恐らくテンペストジャケット、ピークシェルジャケットもePEになるでしょう。
新Gore-texフィルムePEの耐水圧・透湿性能といったスペックはモンベルを始め、どのアウトドアブランドも掲出していません。
そのためスペックは未知数ですが、1つ予想できることがあります。
それは旧Gore-texフィルムePTFEよりも、透湿性能は劣るのではないかということです。
ePTFEフィルムの使用時のモンベルのレインウェアでベンチレーションが付いていたのは、トレントフライヤー1つだけでした。
ですが今回のアップデートに伴い、ベンチレーション付きのモデルが2つ登場しています。
またThe North Faceのクライムライトジャケットも、2025年モデルからePEフィルムに変更されたと同時にベンチレーションが付いたんです。
ePTFEフィルムではなかったベンチレーションが、ePEに変更されて付いたことにより透湿性能の低下の懸念が可能性として考えられます。
スペックも出されていない、実際に試験をしたわけでもないので推測の域は出ませんが、新Gore-texフィルムのスペックがどうなのかは今後注視しなければなりません。
一新されるモンベルのレインウェアに注目

モンベルのレインウェアラインアップ一新の情報が出て、業界に激震が走りました。
素材の変更も含めて、今後どのモデルを選ぶべきかを十分考えなければなりません。
既に販売されているモデルもあり、店頭で試着できるようになっています。
今後モンベルのレインウェアを購入予定の方は、それぞれのフィルムのスペックがどうなのかをぜひチェックしてください。