四国には日本二百名山が3座ありますが、愛媛県と高知県の県境にあるのが標高1860mの「笹ヶ峰」です。
笹ヶ峰は西日本最高峰の「石鎚山」、笹原の氷見二千石原が広がる「瓶ヶ森」とともに伊予の三名山と称されています。
笹ヶ峰は字のごとく笹に覆われた山ですが、アケボノツツジやコメツツジ、ブナの巨木や広大な笹原の縦走路など見どころたっぷりの山なのです。
そして山頂からは石鎚連峰の山々を思う存分満喫することができます。
かつては山岳信仰の対象として多くの登山者が行き交っていた「笹ヶ峰」への登山案内です。
登山口へのアクセスと難易度
マイカー
※旧寒風山トンネル南口登山口までのアクセス方法
松山自動車道のいよ西条ICから国道11号、194号線を経由して旧寒風山トンネル南口まで約30km。
旧寒風山トンネル南口付近に無料駐車場有
登山コース
旧寒風山トンネル南口駐車場→桑瀬峠→寒風山→笹ヶ峰
コースタイム(往復) | 体力レベル | 技術レベル |
6時間 | ★★☆☆ | ★★☆☆ |
笹ヶ峰への登山口はいくつかありますが、今回は旧寒風山トンネル南口にある登山口から出発して寒風山頂上を経由、笹ヶ峰まで縦走することにします。
寒風山も笹ヶ峰と同じく愛媛県と高知県の県境にある山ですが、直下には四国最長の道路トンネルが通っています。
1999年に開通した全長5432mの寒風山トンネルです。
愛媛県側から登山口へ行くにはこの長いトンネルを通って向かいましょう。
そしてトンネルを抜けた先に左折ポイントがありますので、そこを左に曲がって林道を進んでいきます。
この林道を約7km走ると駐車場があるのですが、かなりの急こう配で見通しが悪い道となっています。
舗装はされていますが所々落石している箇所もありましたので、道路状況や対向車に十分注意しましょう。
林道の途中で標高は1000mを超えますので、冬季には冬用タイヤなどの滑り止めも必要です。
旧寒風山トンネル南口には約20台程度駐車できますが、かなりの人気で週末となると満車になる事もしばしばあります。
その時は400m程離れた場所にも駐車できるスペースがありますので、そこに車を停めて歩いて登山口まで向かいましょう。
伊予と土佐の国境、桑瀬峠へ向かう
登山口は道路沿いにありますが、黄色いゲートがある先の道路は「町道 瓶ケ森線」で、通称UFOラインと呼ばれています。
ドライブコースとして人気で、平日休日関わらず多くの車が通行していますので、山に向かう方は車の通行にも注意が必要です。
この登山口からは今回目指す寒風山や笹ヶ峰、伊予富士といった展望がすばらしい山々に行く事ができ、登山道も整備されていますので、朝早くから多くの登山者を見かけます。
ここから笹ヶ峰までは約5km、片道3時間から4時間の歩行となります。
まずは登り口早々、急こう配と大岩のお出迎えです。
一瞬どこが登山道なのか分からなくなるぐらいの道ですが、ロープや脚立などがありますので、前方をしっかり確認しながら歩きましょう。
笹ヶ峰までの登山道で一番勾配がきついのが、登山口から桑瀬峠までの約50分間の道のりです。
桑瀬峠まで行けば、あとは比較的なだらかな道が続いていきますので、まずは呼吸を整えながらゆっくり進んでいきましょう。
ロープ場もある岩だらけの道を進んでいくと、次第に雑木林に変わっていきます。
そして眺めの良い笹原の道を進むと一気に視界が開けて、標高1451mの桑瀬峠に到着です。
これから目指す寒風山が良く見えて、絶好の展望スポットと同時に休憩スポットでもあります。
この桑瀬峠で、伊予富士方面と寒風山や笹ヶ峰方面へ分岐します。
伊予富士へは約90分、寒風山は約80分の道のりです。
標高1763mの寒風山へ
桑瀬峠で一息ついたらいよいよ寒風山に向かいましょう。
しばらくは笹原の中を進んでいきますが、展望がとても良いので歩くのが楽しいですよ。
標高が1500mを過ぎて時折流れてくる風がとても気持ち良く、真夏でも快適に山歩きできます。
そして次第に笹原からブナ林に変わっていきます。
登山道にまで長く根を張っている大きなブナを眺めていると、大自然の強い生命力が伝わってきます。
寒風山周辺では、春から夏にかけて色鮮やかな花が次々と咲きますので、時間に余裕がある方はじっくり鑑賞するのもおススメです。
更に進んでいくと、急な岩場の道に差し掛かります。
ロープや脚立などがありますので、足を滑らせないよう慎重に足元を確認していきましょう。
急斜面を通り過ぎると再び笹原の道になり、空が一気に広がります。
周辺一帯が笹原に覆われていて、まるで空を歩いているような感覚になります。
そして寒風山頂上に到着です。
桑瀬峠から見たゴツゴツした印象とは違い、山頂は少し広くなっています。
眼下に広がる絶景とともに、しばらく休憩しましょう。
笹原の縦走路で笹ヶ峰へ
寒風山から笹ヶ峰までは片道約90分の道のりです。
前方を見ると笹ヶ峰まで快適な尾根沿いの道と思ってしまいますが、意外と高低差があって足場の悪い個所もあります。
残りの体力と帰路の時間を考えて、無理だと思ったら寒風山で引き返した方が良いでしょう。
寒風山から進むと笹原の道が再びブナ林に変わっていき、途中には野生の石楠花(シャクナゲ)が咲いていました。
園芸品種として人気のシャクナゲですが、本来は山の植物であり、寒い冬にも耐えられる強さをもっています。
標高1500mを超える登山道で咲く可憐な花は、多くの登山者の楽しみとなっています。
シャクナゲ群生地を過ぎてしばらくは下りの道が続き、脚立で上り下りする個所もあります。
そして再び笹原の道になり、目の前に笹ヶ峰が現れます。
ここからは頂上まで尾根沿いの丘陵線を歩いていきます。
吹き抜ける風が大変涼しくて、眼下には愛媛県西条市や新居浜市の街並み、晴れていると遠くに今治市のしまなみ海道も望めます。
そして後ろを振り返ってみると、西日本最高「石鎚山」も見えるので、気分は最高潮!
例え曇り空の時でも雲海が広がる幻想的な景色に巡り合える可能性もありますよ。
緩やかな上り坂を進むと、看板がある分岐点に差し掛かります。
この分岐の道から下ると丸山荘という山小屋があります。
部屋が12ある大規模な建物なのですが、2021年6月時点で管理人の方は不在で宿泊はできません。
山小屋の中に入ることはできますので、緊急用の避難小屋としては利用できます。
そしてこの分岐点から10分程登ると標高1860mの笹ヶ峰に到着です。
頂上は少し平坦になっていて、石鉄蔵王大権現と大日大聖不動明王が祀られている祠があります。
古くから信仰の山だった名残が今も残っているのです。
そして笹ヶ峰頂上直下に広がっているのは、コメツツジ群生です。
米粒のように小さい花が咲くことが名前の由来ですが、笹ヶ峰のコメツツジの開花時期は7月です。
まとめ
笹ヶ峰は愛媛県と高知県に数カ所の登山口がありますが、私が断然みなさんにお勧めしたいのは今回ご紹介した旧寒風山トンネルから登るルートです。
春から夏にかけて咲く花だけでなく、秋にはドウダンツツジやナンゴクミネカエデの紅葉、冬は霧氷と1年を通して最高の景色が待っています。
そして海の如く広がる尾根沿いの笹原を歩く爽快感は、歩いた人だけが味わえるご褒美です。
登山コースも綺麗に整備されていて、案内表示看板も随所にありますので、初心者の方でも安心して登ることができます。
登山の面白さが凝縮されている日本二百名山「笹ヶ峰」への登山案内でした。