ソロ登山で生き延びるためのヒントと心得

コラム

ヤマケイの調査データ(2014年時点)によると約81%以上の登山者が一人での登山、いわゆるソロ登山を経験しており、36%がソロ登山をメインとしています。

登山のマッチングサービスの登場やコロナ禍(執筆時点2021年8月)で、よりソロ登山者が増えていると考えられています。

ソロ登山が一般的になりつつあるなか、一体どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。

なぜソロ登山が増えたのか?

先駆者の努力により多くの登山ルートが開拓され、インターネットが普及してからは山岳会などの組織で蓄積されたノウハウや情報が公開され身近になることで自由に山や登山技術に関する情報が得られるようになりました。

こちらの図を御覧ください。
こちらは遭難件数をまとめた山岳遭難の概況ですが、H9年あたりから遭難者が大幅に増えているのが伺えます。

登山人口はH21年(2009年)の1230万人から減少傾向にあるにも関わらず遭難者は蔵回傾向にあります。

1976(昭和51)年以降「遭難者数」には無事救出者が含まれている
出典:「平成29年における山岳遭難の概況」(警察庁生活安全局地域課)

ネガティブな事だけではなく山岳地帯にも電波が入るようになり、これまで発見されなかった遭難者が救助されるようになった事も増加数を押し上げていると考えています。

インターネットの普及が遭難に影響している事はここまでにし、ソロ登山が一般的になった現代で私達はどのような事に注意しながら楽しむ事ができるのでしょうか?

[最重要]徹底した計画をせよ

ソロ登山は計画から判断、時には危険な状況では生存確率が高くなる行動を1人で行う必要があります。

その過程にあるのは精度の高い計画と判断。そして謙虚な姿勢です。

登山道が崩落しており通れない、予定よりも時間がかかった、小屋が営業していないなど計画外の事が必ず発生します。

その際に「このまま物事が進むと事態がどのような結果になるか?」を謙虚な姿勢で分析・判断する必要があります。

この判断力は経験を積むことでより精度が高くなり、自然とリスクを回避する行動を行う事ができるようになります。

  • コースタイムは何時間か、自分の実績だと何時間で通過できそうか。
    • 距離が短いのに時間が長い箇所(急登や危険箇所)はクリアできそうか。
  • いつ出発するか、どの時間の電車・バスに乗るのか。
    • バスは運行しているか、終バスは何時か。
  • 乗り遅れたとしてどの時間がリミットで、下山に間に合いそうか(16時までに下山が理想)。
  • チェックポイントを予定時間で通過できない場合どこで引き返すか。
    • バスなどを考慮して下山できるルートは他にあるか。
  • 食事、水はどの程度必要か、小屋は営業しているか。
  • 登山届を出す。(https://www.mt-compass.com/)
  • 登山保険に加入する。
    • 知り合い、家族に連絡しておく。

知れた山から始めよ

ソロ登山で最もリスクが高いのは「滑落」や「怪我」により行動不能になることです。

仲間がいる場合は救助要請する事もできますが、捻挫や骨折で行動不能かつ圏外の場所は発見される事を待つしかできません。

そういったリスクを最小にするには登山者が多い山を選び、積雪期ではない季節を選ぶことです。

都内近郊ですと高尾山、関西地方ですと六甲山、四国ですと剣山など観光地化が進んでおり公式サイトでもルートの紹介が多い事が特徴です。

遭難をイメージせよ

遭難には道迷いや滑落が含まれ、滑落は偶発的に発生する事が多いため防止が難しく、道迷いは地図を持つことで解決されやすい問題です。

意外と知られていないのですがスマートフォンなどに搭載されているGPSは携帯の電波を利用せずに位置情報を得られる技術なためYAMAP、ヤマレコ、山と高原地図などを事前にダウンロードしておくと圏外でも機内モードでも利用することができます。(アプリだけでなく地図のダウンロードも別途必要です)

GoogleMapやAppleMapなどは登山道が描かれれていない事が殆どなため、登山として利用することはできません。

そして、実際に遭難する事を想像してみましょう。

いかがでしょうか?自分がどのように行動するかイメージできましたか?

まず遭難した場合、勇気を持って110か119に通報しましょう。

もし電波がない場合は電波があるところまで行動する必要がありますが、行動の際に注意が必要となります。

  • 夜間の行動はしない。
  • 体力的にも精神的にも追い込まれるため、休憩や野営をして体力を温存する。
  • 気力が出てきたら尾根を登る。電波が入りやすく、運がよければ山頂にでる事ができます。
    • 道迷いの場合、下山を続けると事態をより深刻な状態にする可能性が高いため下山は諦める。
    • 谷には降りない。
  • 家族に連絡している場合は通報される可能性があるのでその場を動かない。
    • 捜索や救助のヘリが来たらヘッドライトをヘリに向ける(森の中でヘッドライトをヘリに向けて照らすと飛躍的に発見しやすくなります)

ここでも地図(GPS)があればルートに復帰しやすい事がイメージできたのではないかと思います。

谷??尾根??地図上でも現地でも見分けが付かない場合はソロ登山を始める前に地図や地形の知識を深める必要があるでしょう。

実際の遭難時に役に立ったアイテムを紹介

これは筆者の経験や実際に遭難した方からヒアリングし実用されたアイテム達です。

救急セットなどが必要だと思われがちですが、骨折など重症の場合は救急セットのみでは治療する事はほぼ不可能なため可能な限り治療以外で生存時間を伸ばす事が重要になります。

充電器

充電器は言わずもがなですが、スマートフォンなどの充電に欠かせないものです。登山地図+GPSがあれば飛躍的にルート復帰が容易になるので必ず持っていきましょう。

エスケープヴィヴィ

本来であればツエルトを推奨したいのですが、ツエルトをテント泊で利用しない登山者にはハードルが高いアイテムとなります。

実際に所持率は35%と低くとどまっている要因も利用頻度が著しく低いことがあげられると考えています。

エスケープヴィヴィは軽量で防水性、保温性も高く丈夫な生地なため、濡れた椅子や座布団代わりとしても利用できツエルトよりも使い勝手が良いのでおすすめです。

耐水マッチ

いざという時に火があれば、救助の役に立つだけでなく火があれば安心し、体温を上げたり、濡れた服を乾かしたり、など生存に繋がる行動に大きく貢献します。

濡れた環境でも使える耐水マッチはエマージェンシーキットに入れておきましょう。

ヘッドライト

夜間の行動は滑落に繋がる事が多く、自体をより深刻にします。また、山林にいる遭難者をヘリコプターで見つけるのは至難の業で、パイロットに対して点灯させたヘッドライトを向けると日中帯であっても発見されやすくなります。

浄水器

水分さえ取ることができれば人は2週間は生存できる可能性が高いことは、これまでの遭難の実績から判明しています。逆に水分を取ることができなければ、脱水症状によるパニックなどで判断を誤り死に至る可能性が高くなります。

沢はないが、泥水は目の前にある。そういったシチュエーションでもピロリ菌、大腸菌、アメーバなどを濾過でき、泥水でもほぼ完全な真水にできる高性能な浄水器があれば飲水に困ることはないでしょう。

ソロ登山は自由だがやりすぎは禁物

ソロ登山は登山者の成長に繋がるだけでなく「今日はあのピークまで行こう」と自由な計画やペースが大きなメリットでしょう。

人は気づかないうちに大きなリスクを取ってる事もあり、他者でなければ気づかない一面も多くあるので登山仲間を探してみませんか?

https://www.yamarii.com/