【丹沢】大倉高原テントサイトを活用した塔ノ岳登山のコース紹介

山紹介

深田久弥の日本百名山にもなっており、東日本屈指の登山者数を誇る「丹沢」✕「塔ノ岳」の最新情報を編集部で取材、取りまとめました。

「丹沢」は神奈川県北西部に位置する、南北20キロメートル・東西40キロメートルの範囲にわたる山域の総称で、最高峰の蛭ヶ岳(ひるがたけ、1,673m)をはじめ、丹沢山、大山などの連なりにより構成されており、ほぼ全域が「丹沢大山国定公園」に指定、豊かな自然が残されている山域でもあります。

目次

大倉高原テントサイト

大倉登山口(290m)から丹沢・塔ノ岳(1,491m)への「大倉尾根」の途中、標高約600mの「大倉高原テントサイト」が3月16日にリニューアルされました。

このテントサイトは、兼ねてから丹沢山系唯一の幕営指定地でしたが、隣接する旧山小屋の解体とサイト周辺の再整備工事のため一時的に閉鎖されておりました。

早速編集部で足を運び、情報を以下の通り取りまとめました。

全体的にコンパクトにまとまった林間・クレーのテントサイトとなっており、標高約600mの尾根上であることから展望も良好です。

塔ノ岳山麓部に位置するため「テント泊の練習場所」や「前日入りのテント泊地」として利用価値の高いサイトとなります。

アクセス大倉登山口から大倉尾根で約40分(標高差約300m)
水  場設置予定(3月27日時点で未整備)
お手洗いあり(チップ制:100円)、ペーパー設置なし
売  店なし
料金・予約無料/予約不要(先着順)
サイトの水はけ普通(クレー)
幕営可能数約20張以上
その他注意事項焚火(焚火台含む)の禁止、休憩用ウッドデッキ上での幕営禁止
出典:施設管理者の情報や編集部の取材による

給水設備は、大倉登山口に近い標高350m地点に1か所(飲用可)あり、現時点ではここが最寄りの水場となっています。

なお、テントサイト付近下段よりパイプで水の湧き出している場所がありますが、「利用可」や「水場」等の案内は一切なされておりませんので注意が必要となります。

「大倉高原テントサイト」活用:登山モデルコース紹介

【のぼり】大倉高原テントサイト→大倉尾根→塔ノ岳山頂

大倉尾根上に位置するテントサイトのため、前泊利用の場合にはまず塔ノ岳を目指すことになります。

大倉尾根は丹沢を代表する登山道の一つであり、4月から5月にかけては、山麓から山頂に向かっていく新緑や、所々で淡い桃色を醸し出すサクラ(マメザクラ、ヤマザクラ)類が風景のハイライトとなります。

4月中旬以降、山麓から登ってくる新緑が手に取るようにわかる

登山道は非常によく整備され、山小屋も随所にあり歩きやすい登山道ですが、登山口からは1,000m以上の標高差があります。

とにかく体力(と下山に耐えられる脚力)を要するため、不安がある場合は隣の「大山」を始めとした、標高差の小さい山から始めるのもよいでしょう。

【くだり】塔ノ岳山頂から

塔ノ岳からの行程は、経験・体力・体調と相談をしながら適宜アレンジが可能です。

① 大倉尾根を下山

登山口・大倉までの標高差約1,200mを一気に下るコースです。下山だけなら楽勝・・・と思いたいところですが、これでもかと繰り返す階段を経て、登山口への到着頃には「膝が笑い、山はおなか一杯」との声も漏れ聞こえてきます。

大倉尾根お馴染みの階段や木道

夏山シーズンには広く目標となる中部山岳(日本アルプスなど)においては、稜線アプローチに最低限必要な標高差となります。体の状態やステップアップを把握するバロメーターとしても使いやすいコースです。

② 鍋割山稜コース経由で下山(健脚向き)

山頂直下の「金冷シ」から大倉尾根を分岐し、「大丸(1,386m)」「小丸(1,341m)」といったピークを越えながら稜線を縦走し、「鍋焼きうどん」で有名な「鍋割山(1,273m)」を経由しながら下山するコースとなります。

山麓では春の気配が訪れる4月上旬、稜線はまだまだ寒く、気象条件次第で降雪の恐れもある。

4月下旬~5月にかけては、新緑のブナに覆われた爽快な稜線縦走がハイライトとなりますが、まだまだ冬の寒さが残る4月上旬は、ところどころに残雪もみられます。

鍋割山山頂からは、分岐に注意を要する「後沢乗越」や、川のせせらぎに癒される「二俣」を経由しながらの下山となります。「鍋焼きうどん」用の水がおかれた「ミズヒ沢」出合で登山道は終了しますが、その後も大倉登山口まで約5㎞の林道歩きとなります。

③ 表尾根コース経由で下山(健脚向き)

塔ノ岳山頂から伸びる展望に優れた縦走コースとなり、「行者ヶ岳(1,180m)」周辺の鎖場やコース後半に差し掛かる際の「三ノ塔(1,205m)」への登り返しが核心となります。

右手に相模湾、左手に山岳風景を見ながら小気味よいアップダウンが続きます。

Pixta:新緑の丹沢表尾根

塔ノ岳方面から利用する際には、「塔ノ岳直下」「新大日~政次郎ノ頭付近」「行者ヶ岳付近」はザレ気味の下り坂となるのでスリップ・転倒には注意が必要な区間となります。

Pixta

また、360度の展望が広がる「三ノ塔」からは「ヤビツ峠(表尾根コースと車道、約1.5時間)」と「大倉(三ノ塔尾根コース、約2.5時間)」への下山が選択できます。

紹介コースのデータまとめ

入山者やwebでの露出が多いために容易なイメージを持たれがちですが、通常は1日を目一杯使う登山となるため、入念な準備・無理のない計画が必要です。

コースコースタイム距離累積標高差(のぼり)
① 大倉尾根コース約6.5h約13㎞約1,500m
② 鍋割山稜コース
(健脚向き)
約8.5h約17.5㎞約2,000m
③ 表尾根コース
(健脚向き)
約8h約14㎞約1,800m
参考:奥高尾縦走(和田峠‐高尾口)約6h約15㎞約900m
参考:北ア・燕岳(中房温泉)約7.5h約10㎞約1,500m
※各指標は「ヤマケイオンライン」による

関連イベント情報/下山後

秦野丹沢まつり(中止)

4月16日~17日に予定されておりましたが、新型コロナウイルス感染症の収束が見込めないため、本年(2022年)も開催中止になります。なお、開山式は関係者のみで実施とのことです。

第66回秦野丹沢まつり【開催中止】 | 秦野市役所 (city.hadano.kanagawa.jp)

入浴

日帰り入浴施設は登山口から少し離れた中心市街地方面になります。徐々に暑くなる季節となってきますので、汗を流してからの帰宅はいかがでしょうか。

施設名場所
秦野天然温泉 さざんか (onsen-sazanka.com)小田急線・東海大学前駅 徒歩7分
日帰り温泉名水はだの富士見の湯 (hadanofujiminoyu.jp)小田急線・秦野駅 送迎情報は公式サイトをご覧下さい。
湯花楽 秦野店 (yukaraku.com)はだの桜みち
秦野市鶴巻温泉 弘法の里湯  ||  小田急線 鶴巻温泉駅前の日帰り温泉です。 (spa-tokyo.net)小田急線・鶴巻温泉駅
徒歩2分
はだの・湯河原温泉【公式サイト】 | 万葉倶楽部グループ (manyo.co.jp)小田急線・秦野駅 送迎情報は公式サイトをご覧下さい。

アクセス

マイカー:秦野丹沢スマートICがまもなく開通

表丹沢山麓を貫く開通前のハイウェイ。

2022年4月16日(土)、新東名高速の延伸により「秦野丹沢スマートIC(ETC専用)」が開通、東京方面からのマイカーアクセスが大幅に向上します。

2020年の「伊勢原大山IC」開通とあわせ、丹沢でも屈指の人気を誇る「大山」・「塔ノ岳」の両登山口まで高速出口から10分程度(Yamariiしらべ)でのアクセスが可能となる予定です。

名古屋方面からは、引き続き東名高速「大井松田IC」か「秦野中井IC」の利用となりますが、変更となる東京方面からのアクセスは以下の通りです。

高速出口からは、「大倉入口交差点」を経由して「県立秦野戸川公園」を目指します。

  1. 出口ゲートを出たら「県立秦野戸川公園」方面に左折。連絡路を降りていくと、すぐに信号機のある県道交差点に出合います。
  2. 県道交差点を「県立秦野戸川方面」に右折、道なりに直進します。
  3. 平和橋(『水無川』)を渡るとまもなく「大倉入口交差点」に差し掛かります。
  4. 「大倉入口交差点」を山方面に右折すると、大倉登山口のある「県立秦野戸川公園」周辺に到着します。
コンビニ沿道になし。平和橋北を左折し、約1分の場所に1店舗。大倉入口を通り過ぎ、約1分の場所に1店舗。
駐車場大倉登山口周辺に民間駐車場が5か所(有料)。台数に限りがあるため公共交通の利用も視野に。
丹沢屈指の登山拠点、春の大倉(県立秦野戸川公園)

電車・バス:登山者にもうれしい利便性の向上(土休日)

電車(小田急渋沢駅からバス)

丹沢をモチーフにした開放感のある渋沢駅舎、大倉行バスは2番のりば

大部分の登山者が利用するアクセス方法ですが、小田急線ダイヤ改正により、大倉行始発バス(6:48)との接続に余裕が生まれました。

これまでは新宿方面からの電車接続が4分で「トイレの時間もない、登山者の大移動」状態でしたが、今春からは約10分の時間がとられています。

また、バスロータリーにはコンビニエンスストアを始め、地元木材を利用した山小屋イメージの清潔なトイレも併設されています。

おわりに

Pixta

以上、今春リニューアルオープンされた大倉高原テントサイトの紹介と、テントサイトを生かした丹沢登山のコース一例を紹介させていただきました。

まだまだ稜線付近では冬の寒さが残る日も多い4月の丹沢ですが、少しずつ春が進んでいる今日この頃、防寒対策の上、ぜひ一度山域に足を運ばれてはいかがでしょうか。

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