【百名山・御嶽山】霊峰・木曽御嶽山の黒沢口コースを紹介~2014年の噴火被害を乗り越えて~

山紹介

御嶽(おんたけ)山は、長野・岐阜県境に位置する標高3,067mの活火山です。
古くから信仰の対象として親しまれており、今も多くのハイカーに愛されている日本百名山の一座となります。

戦後最大といわれる、63名の犠牲・行方不明者を出した2014年9月の噴火被害後、現在も登山コースの一部に立入規制が敷かれています。

今回は、2022年6月に噴火警戒レベルが1に引き下げらたことで、最高峰・剣ヶ峰までの登山が可能となった黒沢口コースを編集部で歩きました。

目次

御嶽登山のコース概要

御嶽山頂には複数の登山道が至ります。

代表的なコースには、「御岳ロープウェイ」飯森高原駅(七合目付近)からの黒沢口コース、あるいは「田の原駐車場」からの王滝口コースが挙げられます。

現在、王滝口コースから剣ヶ峰を目指すことはできません。

今回は、マイカーで直接アクセスすることができる、六合目中の湯からの黒沢口コースを紹介いたします。

コースの難易度・注意点

信州山のグレーディングによると、体力度〔3〕技術難易度〔B〕となります。
3,000m級の日帰り登山ができる十分な体力、登山の経験、適切な登山の準備が必要です。

コース累積標高差距離山のグレーディング
黒沢口(六合目中の湯)1,280m約9㎞ー(評価なし)
(参考)
黒沢口(ロープウェイ終点)
950m約8㎞3B
(参考)
王滝口(田の原)
930m約7㎞3B
(参考)
木曽駒ケ岳(千畳敷駅)
430m約4㎞2B
出典:信州山のグレーディングおよびYamarii編集部しらべ
森林限界上となる標高3,000m付近の登山道

標高3,000mの酸素濃度は地上の約7割となります。
山頂付近では、大きく息を切らしながら登る登山者の姿が見られました。

  • 御嶽山は活火山

王滝口コースの王滝頂上~剣ヶ峰間を始め、立入規制区間があります。必ず以下公式webサイトをご覧ください。ヘルメットを常時着用している登山者の姿も見られました。

【リンク】御嶽山公式情報 : 木曽御嶽山安全対策情報 – 御嶽山火山防災協議会 公式サイト

アクセスと周辺施設

マイカー

六合目中の湯駐車場
  • 国道19号・木曽町「元橋」交差点から県道20号、御岳ブルーライン経由で約30㎞
  • 国道19号・木曽町「木曽大橋」交差点から国道361号、開田高原、御岳ブルーライン経由で約40㎞
  • 登山口周辺に無料駐車場があります。

電車・バス

  • JR木曽福島駅より、木曽町営バス「御岳ロープウェイ線」の「六合目中の湯」バス停下車、約60分。(夏季運転、便数は往路3便/日、復路4便/日。)

※秋季(8月下旬-11月上旬)は「御岳ロープウェイ駅」のみ停車となり、「六合目中の湯」には停車しません。

周辺施設

トイレと水場

  • 登山口横にトイレがあります。水場はありません。

商業施設

  • 最寄りのコンビニエンスストアやスーパーマーケットは、国道19号沿いや木曽福島に集中しています。

登山届

  • 登山口に登山届と投函ポストが設置されています。

コース紹介(六合目~剣ヶ峰)

標高1,850mの登山口の朝は、夏といえども少し冷えます。

準備体操を終え登山口を出発すると、まずは樹林帯の登山道に入ります。しばらくは、最も経験の浅い同行者の様子を見ながら登っていきます。

御嶽山の山岳信仰形態は神仏習合に特徴づけられます。登山口には小さな社と行者像が隣り合っています。

直前まで雨が降っていましたが、登山道にはぬかるみが見られます。防水機能のあるシューズがあると便利です。

六合目中の湯から一時間強で七合目に到着です。御岳ロープウェイ・飯森高原駅方面からの登山道が合流するため、登山道は一気に賑やかになります。

下山時はルートミスに注意です。六合目中の湯は直進、御岳ロープウェイ駅は左折となります。

七合目から八合目にかけても引き続き樹林帯が続きます。展望に恵まれる区間ではありませんが、木々の間より中央アルプス方面を眺めることも可能です。

亜高山帯特有のダケカンバが見られるようになると、八合目まではもう少しです。

七合目から一時間強で、標高約2,450mの八合目に到着となります。山小屋「女人堂」を始め、噴火で被害を受けた山頂付近の御嶽神社奥社の仮殿(御嶽神社中社)があります。

初秋の訪れを感じるナナカマドの赤い実

ナナカマドの実が多くみられる山小屋前では、多くの登山者がベンチに腰掛け、思い思いの時間を過ごしています。ここに至るまでには、既に紅葉が始まっているナナカマドも見られました。

山中にある霊神碑は数万あるといわれている

八合目を過ぎると木々の高さも徐々に低くなり、2,550mを超えたあたりからハイマツ帯を進みます。標高も高く、登山者によっては息苦しさを徐々に感じ始めるかもしれません。

火山活動の結果なのか、広い範囲で枯れているハイマツが見られる。

足元の礫(れき)が次第に大きくなり、傾斜が急になってくると、間もなく最後の有人小屋「石室山荘」の姿が見られます。

九合目手前から先は、コースの中でも傾斜がきつい「胸突八丁」エリアとなるため、無理のないペースで進むことにします。

振り返ると、雲の切れ目から御嶽裾野が顔を出していた。

石室山荘から上を見上げると、急登の先に九合目の「覚明堂」が小さく見えています。覚明は江戸時代に黒沢口を開いた行者で、これを足かけに全国に御嶽信仰が広まったといわれています。

九合目覚明堂までの急登を進む登山者。この区間は浮石も多いため特に下山は注意したい。

八合目から約一時間半、覚明堂の先からようやく登山道が緩くなり始めます。

周囲がガス(雲)に包まれてきました。

稜線付近は湿り気を含んだ風が強く、周囲を遮る樹木もないため一気に身体が冷えてきます。上下セパレートのカッパや上着は必須となります。

ガス(雲)の切れ目から一瞬、二ノ池方面の展望が開けました。

写真中央から右にかけての白い部分は、粘土質になった火山灰

九合目からガイドロープで区切られた道を進むこと約40分、間もなく剣ヶ峰直下に到着します。脇に目をそらすと、水分を含み粘土質となったグレーの火山灰が岩の間を埋め尽くしています。

あれから約8年、荒涼とした稜線にもタデ科の植物が見られ始めています。御嶽山と同様、火山かつ霊峰として親しまれている富士山でも見られる植物です。

緊急避難用のシェルター

緊急避難用シェルター横から伸びている登拝階段を登ると、最高峰の剣ヶ峰(3,067m)に到着となります。

行き交う多くの登山者も、多くは語りません。

御嶽神社奥社
新しさに重みを感じた山頂碑

おわりに

御嶽山麓、開田高原に広がるソバ畑

ここまで、日本屈指の霊峰・木曽御嶽山の黒沢口コースを紹介させて頂きました。

火山活動の影響により、現在も山頂・剣ヶ峰に至るコースは限られていますが、3,000m級登山への万全な備えと、確実な火山・登山情報をもとに、是非初秋の御嶽登山を楽しまれてはいかがでしょうか。

※3,000m級の御嶽登山の際には、登山靴・雨具防寒具・ヘッドライト・地図・食料・十分な水・救急キット等を含めた登山準備を含め、必ず公式情報をご覧頂きますようお願い申し上げます。