この記事は、11月上旬現在の丹沢大山国定公園・大山(おおやま)地区の紅葉情報を実際の山行取材に基づいて取りまとめたものになります。
大山の良弁僧による開山は奈良時代の752年と歴史は古く、江戸時代には「大山講」として庶民の間での信仰登山が流行、令和の現在は登山そのものを目的とした近代登山としてその姿を変えながら、厚みのある登山文化が継承されている地域となります。
大山地区では11月中旬から下旬にかけて中腹の社寺周辺で紅葉のライトアップが行われておりますが、2021年は11月20日(土)~28日(日)実施と公式より発表もございました。
Yamarii編集部にて情報収集を行ったコース
秦野市街(弘法山入口)~ 秦野・蓑毛登山口 ~ヤビツ峠~イタツミ尾根~大山山頂~見晴台~阿夫利神社下社~男坂/女坂~伊勢原・大山ケーブル口~かごや道~秦野・蓑毛登山口
紅葉インフォメーション(丹沢・大山地区)
観測地点名・登山道名 | 標高 | 紅葉の状況 |
---|---|---|
秦野市街(弘法山入口) | 約150m | 青葉~色づき始め |
秦野・蓑毛登山口 | 約300m | 青葉~色づき始め |
伊勢原・大山ケーブル登山口 | 約300m | 青葉~色づき始め |
男坂コース | 約300~650m | 色づき始め |
女坂コース | 約300~650m | 色づき始め |
阿夫利神社下社付近 | 約700m | 色づき始め |
見晴台コース(大山東の肩) | 約700~1,252m | そろそろ見頃~ピーク |
ヤビツ峠付近 | 761m | そろそろ見頃 |
イタツミ尾根 (大山西の肩) | 761m~1,252m | そろそろ見頃~ピーク |
大山・山頂 | 1,252m | 散り始め~ピーク |
大山の西側(蓑毛~ヤビツ峠~イタツミ尾根)の紅葉詳細
現在は、大山登山のメインルートといえば伊勢原方面(大山ケーブル口)からの表参道となりますが、今回はかつて大山の裏参道として栄えた秦野方面(蓑毛集落)から山頂方面を目指していきたいと思います。
蓑毛~ヤビツ峠:色づき始め~そろそろ見頃
標高300m程度の登山口周辺の紅葉状況ですが、まだ多くの木々でうっすらと色づいてきたかな・・・程度の状況でした。稀に、紅い色づきが深くなっているカエデ類をみることが出来ますが、まだまだ紅葉の本番はこれからといったところです。
この蓑毛からは、裏参道(蓑毛越・みのげごえ経由で表参道16丁目を目指し、そこからメインの本坂に合流する)回りと、ヤビツ峠回り(柏木林道)の2つのコースを選択することが可能です。
裏参道回りも歴史ある古道になりますが、針葉樹(スギ・ヒノキ)帯を通過することになるため、今回は紅葉箇所の多いヤビツ峠回り(柏木林道)を選択します。
眼下を流れる春岳沢の水流音を聞きながら、柏木林道(未舗装の登山道)を進んでいきます。
登山口から30分程進んだ標高600m周辺より徐々に色づきも深まってきますが、「まだまだ」といったところです。この柏木林道は、今から約90年前の昭和6年に故柏木幹太氏が私財を投入し切り拓かれ、現在は地元の組合により守られているそうです。
さて、林道が尾根筋から外れトラバース気味になり始めると、あとひと踏ん張りでヤビツ峠に到着となります。このあたりの標高700m付近からは、目に見えて谷筋の紅葉が進んでいるのが分かるようになります。
※蓑毛~ヤビツ峠間は、朝夕を中心にバス便も設定されております。
ヤビツ峠~イタツミ尾根:そろそろ見頃~ピーク
ヤビツ峠と山頂間の距離は約2.3㎞、標高差約500mとなりますが、概ねコースの中間である標高950m付近からはカエデを始め大部分の木々が黄葉・紅葉をしている状況で、まさに錦秋、見ごろを迎え始めます。特に北斜面の紅葉が美しく映えておりました。
隣の尾根(通称「諸戸の尾根」)の紅葉も見ごろです。
この尾根が徐々に大きく近づいてくると、標高も1,100m近くになり、間もなく表参道との合流点(26丁目)に到着します。
26丁目付近になると、間もなく紅葉のピークを迎えそうな木々と、既に紅葉が散り始めている木々が混じり始めることから、紅葉のピークは900~1,100mだと思われます。
大山山頂、付近:ピーク~散り始め
鳥居の姿が見えると、まもなく山頂に到着です。売店を始め、御祭神ごとに複数の社殿がたたずんでおり、特に海側と東京側の展望が特に優れております。売店の前付近には、その昔「雨降木(うこうぼく)」(大山の別称:「雨降(あめふり)山)と呼ばれるブナの大木があったそうですが、現在は枯死により姿を消しております。
山頂直下にはお手洗いおよびOYAMA Wi-Fi(フリーWi-Fiスポット)が設置されておりますので、各種情報もリアルタイムで入手可能です。
また、大山登山の情報をまとめた「大山めぐりガイド」という公式アプリもあるそうです。
OYAMA Wi-Fi(伊勢原市) : https://www.city.isehara.kanagawa.jp/kankou_guide/docs/2016120200020/
大山の東側(見晴台コース~見晴台~阿夫利神社下社)の紅葉詳細
見晴台~大山山頂:そろそろ見頃~ピーク
登ってきたコースとは反対の、大山「東の肩」を形づくる見晴台コースを下っていくことにします。
見晴台までの標準コースタイムは約1時間、標高差で約500mがありますので、紅葉の移ろいがみられることを期待しながら進むことにします。
「西の肩」のイタツミ尾根同様、山頂付近から既に紅葉は見頃を迎えており、紅葉のトンネルの中をぐんぐん下っていくことになります。
今回の記事では取り上げることは出来ませんが、木々の間からメインの本坂方面の紅葉(本坂は山頂~16丁目付近までが広葉樹を中心とした紅葉鑑賞に適する区間、望遠ではそろそろ見頃)の様子もよくわかります。
見晴台コースの紅葉も、900m付近から山頂までの区間で間もなくピークを迎えそうです。
なお、普段はコースタイムに自信をお持ちの皆様方も、人出の多い登山道では追い抜きがかなり困難なのが実情です。場所により無理に追い抜こうとすると危険であり、また、追い抜いても先行者にすぐに追いついてしまう為、この時期の主要登山道を歩かれる際は、混雑を見込んだ余裕を持つ必要があるでしょう。
見晴台~下社:色づき始め
見晴台から下社までは、大山の中腹をトラバース気味に下社まで歩くことになります。
紅葉箇所は若干すくなくなりますが、途中モミの原生林(特別天然記念物)エリアや二重滝といった見どころを通過していきます。
大山寺&阿夫利神社下社、付近:色づき始め
大山のケーブルカー駅や売店、見どころとなる社寺が集中する標高約500~700mにわたる大山でも最も賑やかなエリアとなります。
最盛期には紅葉と人出の中心であり、写真等でも良く取り上げられるカエデ類の紅葉が特に美しい場所です。この日は、大山山頂方面への表参道登拝門周辺の紅葉がワンポイントで特に進んでおりました。
冒頭で触れさせて頂きました「大山ライトアップ」期間中の中心となる阿夫利神社下や大山寺周辺のカエデは、まだ色づきが始まったばかりです。今後の紅葉の進み具合が楽しみです。
山麓から中腹(大山ケーブル口からの男坂&女坂):色づき始め
この区間は、メインルートである伊勢原側の大山ケーブル口から下社に至る標高約300m~650m付近の状況になります。伊勢原駅からのバスターミナル周辺では、まだうっすらと色づき始めた程度になります。
途中こま参道を経由して大山ケーブルのりば、男坂、女坂の分岐点に差し掛かりますが、標高差はそこまでないので大きく紅葉に変化はありません。
女坂
大山寺付近の標高500m付近から徐々に色づきが濃くなってきます。ただ、全体的にはまだまだ色の薄い紅葉が多くを占めています。女坂には街灯が設置されておりますが、あくまで登山道ベースの遊歩道であり、大山寺~下社間には段差のある急石段が続きますので注意が必要です。
男坂
紅葉の進捗は女坂と大きくは変わらない状況でした。こちらは登山道であり、もちろん日没後は暗闇となります。女坂よりも全体的に急な石段や露岩箇所を通過することになり、転倒事故も比較的多く発生しております。
道迷い多発箇所:「かごや道」の下山に注意
紅葉情報から少々離れる内容となります。大山の当該地区を管轄する伊勢原警察署の統計によると、表参道16丁目分岐~裏参道~西の峠~下社へと至るサブコース(通称「かごや道」周辺)では、道迷い遭難が多発しているとの結果が出ております。
また、秋季は日没も早いため、ヘッドライト等照明装備の携帯が推奨されております。皆様も是非安全登山でお願い致します。大山地区の山岳遭難については、別記事がございますので、是非ご参考頂けると幸いです。
おわりに
11月にピークを迎える丹沢・大山地区における最新の紅葉状況を、実際の編集部取材によりお送りさせて頂きました。早いもので山頂付近ではピークを過ぎ、紅葉の最盛箇所は標高1,000m近くにまで下がってきた印象を受けました。9月中旬から北日本や中部山岳から始まった日本の「紅葉前線」も、約2ヶ月をかけてようやく温暖な山域にまで降りてきましたが、どこか懐かしい、優しい色を拡げる大山で今年の紅葉登山を締めくくってみてはいかがでしょうか。